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第1話

プロローグ
4,349
2018/05/16 12:05
シュルッ。


ゆっくりと、木製の箱のリボンをほどく。


そして、中に入っていた新品の制服を手に取る。
《手の中にあるうちは、気づかない。

広いお屋敷も。

シェフが作った美味しいお茶菓子も。

ばあやが飾る綺麗なお花も。

大切な人も》
馳 天馬(はせ てんま)
音。
私の制服姿を上から下へと眺めては
馳 天馬(はせ てんま)
うん。良く似合ってる
ニッコリと笑ってくれる婚約者の天馬くん。



素敵素敵!といいながら
携帯のシャッターを何度も切るお母さん。
江戸川 音 (えどがわ おと)
もう制服オーダーしちゃうなんて、
気が早いよ
お父さん
まぁ、いいだろう。
どうせ半年後には必要なんだから。
なぁ?
江戸川 音 (えどがわ おと)
ええぇぇ
お父さん
天馬くんの新しい制服姿も楽しみだ
馳 天馬(はせ てんま)
届いたら一番に見せに来ますよ
美代子さん(天馬母)
にしても恐ろしいわね。
時の流れる早さは
お父さん
二人がもう高校生なんだもんなぁ
天馬父
気づいたら孫抱っこしちゃってますよ
お母さん
ほんとよねぇ。
あっ、そうだ!
音ちゃん、天馬くん。
一緒にお写真撮らない?
天馬くんのお母さんと私のお母さんは

高校時代からの親友で。

お互い子供が生まれて異性だったら、

婚約させよう。

という約束をしていたらしい。



家族がいて、



たくさんの人たちに囲まれて、



笑顔で暮らしていた。





この日まで、





私は幸せだった。






《なくなって、初めて気づくんだ。


何一つ、当たり前じゃないって》
まさか、あんなことになるなんて…




思いもしなかった。

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