家で繰り広げられるC5定例会議。
俺はただ、海斗たちの話に耳を傾け
窓の外の景色を眺めた。
英徳学園と桃乃園学院はいわゆるライバル校。
きっと、その桃乃園を仕切っている生徒会長・馳天馬は相当な力の持ち主なんだろう。
学院全体がテーマパーク化してて、
敷地内には川が流れてて
ヴェネツィアみたいとか。
金をかけまくって色んな所から
生徒を引っこ抜いてるって噂を耳にした。
最近、英徳から桃乃園へと時代が流れてる。
今まで、どこの学園より
絶妙な人気を誇っていたというのに。
海斗がタブレットの画面には
【英徳学園・桃乃園学院 比較データ】
が映し出されている。
当然だ。
なんてったって、
その当時、あの人たちがいたんだからな。
スライドされる画面上の英徳のグラフは、
徐々に下がっていく。
どんどんと発される海斗の言葉に
徐々に徐々にイライラが増していく。
自分達のできの悪さに腹が立つ。
光輝くあの人たちの姿が…
目に浮かぶ。
あの人たちの手で作り上げてきた
この学園の地位を。
俺達の代で壊すわけにはいかない。
うちの学園の生徒が少なくなるということは
そのうち定員割れを起こして
学園を維持する為に
新しい生徒を獲得することになり、
生徒のレベルを下げざるを得なくなる。
隠れ庶民が入ってきて
英徳学園の品位が落ちる。
俺たちは断固、それを食い止める。
この、ブラックジャケットと、
コレクト5(正しき5人)の名に懸けて。
寄付金も払えない貧乏人を、
この学園から抹殺する。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!