そんな小言をソファーにドカンと
ねっころびながら言うお母さんを無視して
ひたすら小さな窓の外にある物干し竿に
洗濯物をかけていく。
そうこうしてる間に
洗濯はあっという間に終わって
かけていたエプロンを外していると、
ふいに視界に入ってきた大きな衣装箱。
と、急にソファーから身を乗り出して
駆け足でその衣装箱へと向かうお母さん。
中には
黒いお洒落なヒール。
見るからに高価なバッグ。
ドット柄の可愛いワンピース。
《我が家がこんなになってからも
天馬くんとの婚約は続いてる。
それは…天馬くんのお母さんの遺言でもある。
ただし、条件付きで。
それは、18歳まで英徳学園に在籍すること》
"はい"
と渡された携帯電話を
戸惑いながらも受け取る。
電話越しの相手は
天馬くんの義母の理恵さん。
理恵さんは毎月必ず
たくさんのプレゼントを用意して今日みたいに
家まで届けてくれる。
感謝。
こんな高価な物、
今の私には程遠いものだから…、
《この婚約だけが
うちの家族の希望の光。
だったのだけど…》
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。