…1年半後…
ー現在ー。
《お父さんの会社が倒産して
当たり前は全て崩れ落ちた。》
朝、起きたら
自分で作った少しのおかずを
小さなお弁当箱につめる。
100均で買った水筒には水道水。
これが、今の私の日常。
《シャンプー代がもったいなくて、
髪も短く切った。》
ソファーの上でいつものように
眠っていたお母さんがいきなり飛び起きたかと
思えば、
何か寝言をいいながらまた眠っていった。
お母さんを起こさないように、
小声で言って、そっと私は家を出た。
ながーい学校への道のりを歩いていく。
学校に近づいていくと、
次々に通りすぎていく高級車たち。
《私の手の中に残ったのは、
この学園の制服だけだ。
私がなくした当たり前を持つ
スーパーセレブの子女が通う名門学校。英徳学園》
当たり前のように交わされる金持ちらしい会話。
友達の麻美と京子。
彼女たちももちろん、
お金持ちのご令嬢。
つまり、今の私では釣り合うはずのない人達。
友達であるこの二人でも
私は気が気でない。
いっつも気を使わなきゃいけないし。
この二人は友達だと思っていた人が、
実は貧乏だった…。
なんて知った時はどうなるんだろう?
そんな人達が集まるこの学園で、
私の家庭の話は断じてしてはならない。
バレてはいけない。
だって、この学園には…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!