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第4話

霊感女子大生と椿木ホテル
105
2019/02/20 06:22
あの後、強制という形で私は椿木ホテルに就職する事になった
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
はぁ…なんでこんな事に…
ため息をついて荷造りをし始めた
その時
ドンドンドンドンドン!
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
きゃっ!
乱暴にドアを叩く音がし、私もその場にいた女性の霊も言葉通り飛び上がった
布士さん
おぉい!!いるんだろう!?
扉を叩いているのは隣の布士(ふし)さん
きっとまた苦情を言いにいたんだろう
やれやれ…私は管理人じゃないって言うのに…
ドンドンドンドンドン!!
布士さん
おい、硝子町ぃ!!
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
はい!今行きます!
これ以上扉を叩かれて壊されたら大変だ
私は重い腰を持ち上げて玄関に向かった
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
こ、こんばんわ…布士さん…
扉を開けて私は営業スマイルを布士さんにする
布士さんはギロりと睨むと唾を飛ばす勢いで言った
布士さん
硝子町…お前子供ぐらい面倒を見ろって何回も言ったよなぁ?
毎日毎日子供の泣き声がうるせぇんだよ!!
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
いえ、ですから近所の子供じゃないでしょうか?私の家には子供なんていませんし…
布士さん
あぁ!?じゃあなんで子供の泣き声近くで聞こえるんだよ!!
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
ですから…
めんどくさいなぁ…
布士さんは霊感が少しあるみたいで子供泣き声というのは亡くなった子供の霊の声だろう
それを私のせいにする。こんなのは日常茶飯事なのでもう慣れたが、何にせよ疲れる
あーぁ…早く帰ってくれないかなぁ…
布士さん
チッ、もう俺に迷惑かけるなよ
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
すいません…
はぁ…やっと終わったぁ…
後ろを向くと女性の霊が布士さんの背中を睨んでいた
なんで睨んでいたか分かっのかって?
女性の霊から殺気が放たれていたから
私は女性の霊に笑いかけて「大丈夫」と言おうとした
が、女性の霊は布士さんの後ろにつくと首を占め始めた!
布士さん
がっ…!…グッ……た、たすけ……
布士さんが苦しそうに助けを求める
女性の霊は先ほどの顔から一転、恐ろしい顔をしていた。憎しみ、苦しみ、悲しみ、負の感情が全て混ざりあったような顔
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
やめて!お願い!やめて!
このままでは布士さんが死んでしまうかもしれない。私は霊を引き剥がそうと手を掴むがびくともしない
布士さん
ぐ……が……!
女性の霊は、首を絞める力をさらに強くし、布士さんを見て笑った
…楽しそうに、苦しそうに。
私は女性の霊を抱きしめた
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
殺しちゃダメ!殺したらきっと後悔する!!
邪魔をするなと私を睨むが、私は引かない
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
確かに嫌な目にあったけど…その後貴女が苦しむ姿を見るのはもっと嫌なの!!
霊は囁くような声で言った
『私のこと…心配してくれてるの…? 』
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
私のために怒ってくれてるんだよね?
もういいよ、それだけで十分だから…
女性の霊から涙が零れた。先ほどの鬼のような形相から穏やかな表情に戻っていった
霊が布士さんから手を離した、布士さんは咳き込んでいるけどもう大丈夫だろう
女性の霊は私に笑いかけると白い靄に包まれていった
『ありがとう… 』
その言葉とともに女性の霊は消えていった
布士さんを見るといつの間にか気を失っていた。死にかけた上に霊的なものを見てショックを受けたのだろう
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
も、もしかして…私が部屋まで連れていかなくちゃいけないの…?
このままでは住民に怪しまれるだろう
はぁ…とため息をつく
両脇を抱えてなんとか連れていこう…
椿木 魁 (ツバキ カイ)
いやぁ~、お見事だったよ~
聞き覚えがあり過ぎる声に振り返ると椿木さんがニコニコと笑いながら近づいてきた
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
え、あ、な、なんで椿木さんが?
椿木 魁 (ツバキ カイ)
あはは、驚いた?
俺、今から帰るんだけど飛行機で行くんでしょ?ホテルまで車で送ろうと思ったからいつの飛行機か聞きに来たんだ~
そういやバタバタし過ぎてメアドもLINEも聞いてなかった…
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
そうなんですか…
あっ、こ、これには複雑な事情があって…
椿木 魁 (ツバキ カイ)
うんうん、分かってる分かってる
硝子町さんがその男の人に襲われて硝子町さんが倒したなんて思ってないし
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
そのいやに具体的な例え出してるところで思ってましたよね
椿木 魁 (ツバキ カイ)
あははははっ!
まぁ、詳しいことは明日話すよ。時間はたっぷりあるし
とりあえず飛行機の時間とLINE教えてくれる?
笑い上戸な人だ
そう思いながらスマホを出してLINE交換をし、飛行機の時間を教えた
椿木 魁 (ツバキ カイ)
OK
じゃあ明日迎えに行くから
あっ、その人部屋に返さないとね
椿木さんが布士さんを指さすと椿木さんの倍ある布士さんを持ち上げ「部屋どこ?」と聞いた。私は隣を指さすと「OK」と言い布士さんを運んでいった
椿木 魁 (ツバキ カイ)
これでよしっと、じゃあまた明日ね
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
は、はあ…また明日…
椿木さんは何も無かったかのように去っていった。
私は誰もいない自分の部屋に帰りお風呂に入った
湯船につかりながら、先程のことをぼんやり考えた
布士さんの首を絞める女性の霊
穏やかに笑って消えていった女性の霊
唐突に現れ、何事も無かったように去っていった椿木さん
まるで遠い昔にあった事の様にフラッシュバックした
硝子町 雫 (ガラスマチ シズク)
これから…どうなるんだろう…
そう呟いて湯船に肩まで浸かった
そこの頃椿木さんは電話で話をしていた
椿木 魁 (ツバキ カイ)
もしもし?柳田さん?
椿木 魁 (ツバキ カイ)
見つけたよ、凄くいい従業員♪
椿木 魁 (ツバキ カイ)
え?うん、条件も揃ってる
椿木 魁 (ツバキ カイ)
あ~…忘れてたそのこと伝えるの
でも、俺あの子気に入ったよ
椿木 魁 (ツバキ カイ)
明日伝えるよ……うん…うん
椿木 魁 (ツバキ カイ)
分かった、じゃあ11時ぐらいにはつくから
うん、じゃあ
椿木さんは電話を切ると
そっと呟いた
椿木 魁 (ツバキ カイ)
やっと見つけた…俺のお嫁さん♪
そう呟いていた事を私は知らない

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