体育祭。
我々保健委員会にとって1番忙しい日になるとか何とか、先輩がぼやいていた。
体育祭が憂鬱なのは私も同じで、クラスのクジでリレーのメンバーに選ばれてしまっていたのだ。
だって、放課後の保健委員会の時間が奪われてしまうじゃんか。
それが本当に憂鬱、あぁ駄目だなぁ。
ずっとネガティブなこと考えちゃってる。
あの日から夜九良先輩は私に対する態度を急速に和らげた、ただいつもクールというか、まぁ、冷たいところはあるかもだけど。
この人は霞沢みはね。
明るくて、元気で運動が大の得意な私の友人だ。
そう言って片目を瞑り、ウィンクをする姿はお星様がトゥインクルしてるのか……?
と思うくらいキラキラしてた。
体育着に着替え、ストレッチをしている最中。
私は校庭にいる1人の男性を見ていた。
我が校の生徒会長。
名前は確か……。
そうそう、冬月茜
真面目って感じの人で生徒会長としての挨拶がすごく立派だったのを覚えてる。
それと同じく、貼り付けたような笑顔が怖いヒトだったなって、肌で感じて……。すこし、怖い人だなぁとも思った。
でも今はあのとき感じた雰囲気なんてものはなくって、爽やかな先輩っていう年相応の雰囲気に感じる。
赤組のはちまきをつけてるから、同じチームの人だと思う。
ずっと見ていたことを悟られたのか、バッチリ目があってしまった。
気まずくなってサッと目をそらす。
秘密だよ。
と生徒会長はにこやかに笑っていった。
その笑顔をみて、背筋がゾッと凍りつくような感覚がした。
そう言って、生徒会長は去っていった。
やっぱり、あの人のことはちょっと怖い。
貼り付けたような笑みも、優しげに細められた瞳にも冷たくて、触れちゃいけないようなものを感じてしまう。
その時、私は何も知らない。
先輩の心の温度も。
あの無機質な瞳の色も。
何もかも。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。