先に入った葵様…もといお嬢様を見てふむ、と考える。
何が惜しいのかは分からないが何となく惜しい気がする。何がかは分からないが。
後ろから声をかけられ、驚いて振り向けばそこに居たのは白髪の女性だった。
彼女は車いすに座ってこちらを見上げていた。
…そう言えば、車いすの先生がいる、と聞いた気がする。
たしか名前は、
私は思わず声を漏らす。
不思議そうな顔をした綾川先生に、何でもないです、と笑みを張り付けた。
確か、綾川と言えば、ネトゲのガチ勢…確かそっちの名前はSpica、だったかしら。
そこよりも、気になるのは向こうの噂…物腰柔らかに見えて、凄く腹黒いっていう…。
大丈夫かしら…?
私が中に入れば、有賀先生の車いすを綾川先生が押して教室に入ってくる。
二人とも仲がよさそうだな、と思いながらピンクの髪の女の子の隣に座る。
紅雅美珠莉那…うん、なんか私目立つ人とかキャラが濃い人に囲まれてる気がするのだけれど、気のせいかしら?気のせいよね?
彼女は確か、踊り手をやっている。名前は、緋百合だったか。彼女にぴったりだ。
教室の後ろの方を見てみると、眠っている金髪の女の子の肩をゆすっている水色の髪の女の子がいた。
…うん、えぇと…ゲーム好き、多いわね?あの金髪の子もゲームの方で割と有名な子よね…。ゲーム実況の動画に一回だけ出てた。
名前、何だったかしら?
…まあ、今はいいかしらね。
あ、あの子起きた。
……寝癖、直したい……後で直させてもらおう。
そんなことを考えてると、先生が話し出したので前に向き直った。
先生はそこで言葉を区切って目を開き、右目をコツコツ、とたたいた。
その固い音が、義眼であることを証明していた。
その先生の言葉にどよめきが起こる。
そして彼女はいたずらっ子みたいににんまりと笑った。
だいぶ反応に困るジョーク?を言われてシーンと静まり返った。
呆れたような綾川先生に有賀先生が渋々といったように頷く。
綾川先生はため息をついて、私たちに向き直った。
あ、さっきのうるさい人ね。
…何というか…
そんな話をしている間に私達の順番が回ってきた。
私は立ち上がって一礼する。
淡々とそう名乗って席に座った。
と名乗る。
隣で珠莉那が立ち上がった。
いや葵様、苗字は名乗りましょう?
あと嘘はやめましょう?バレますよ?
この人…絵師さんだったかしら?
この人、絶対に怒らせたらダメなタイプね…。
有栖川さん、ね。だからAliceか。
というか凄くどうでもよさそうに見えるのは私だけ?私だけでしょうね、一瞬の表情を読み取れる人あんまりいないし。
これまた元気のいい人が現れた。
というかこの人も大概ヤバい人だ。
150mぐらいから飛び降りてるのを見たことがある気がする。
いやまあ私にもできるけど、私の場合訓練をしてるからであって…一般人にはできないわよ…。
このクラス異常な人とか多すぎよね。
……なにかやってる?声が聞こえないから何やってるのかは分からないけど…。
先生の言葉にクラスメイト達がそろって返事をした。
万能ちゃんが便利すぎるww
一体情報源はどこなのか…ww
ルナ、続きお願い!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!