あなた「ただいま。」
伏黒「あなたっ、お前……どこ行ってた。」
あなた「蘭と竜胆の家。」
伏黒「何もされなかったか!?」
出た。恵の過保護。
あなた「大丈夫っ。あ、蘭が次会ったとき殺すって言ってたよ。」
伏黒「………俺、何かしたか?」
竜胆の服を洗濯機に投げ込んでシャワーを浴びる。
またあの家に返しに行かないといけないのか。
ぶんぶんと頭を振る。
こんなことを考えている暇はない。
今しなければならないこと。
バジくんが死んで、心に傷を負った人。
少しでも力になりたい。
ピンポーン
千冬「………………はい。」
あなた「あなた。入ってもいい?」
千冬「開いてるから上がってこい。」
心なしかいつもより声が細い。
あなた「お邪魔します……。」
部屋のドアを開けると、窓枠に片足をかけて座っている千冬がいた。
千冬「あなた…………………俺、」
千冬「俺、東卍辞めようと思ってるんだ。」
あなた「千冬………………、」
バジくんは、死んだ。
たくさんの仲間を残して、独りで死んだ。
大きな呪いをかけて、死んでいった。
ダメだ。
呪いを呪いのまま放っておいては、足枷になるだけだ。
仲間が死んで追い込まれていた時、私の信頼している人は私に何をしてくれた?
悠仁が死んだ時、五条先生は_____、
私よりも一回り大きい千冬の背中に手をまわす。
ふわふわの頭を肩にうずめさせる。
千冬「……………汗くせぇっ」
あなた「失礼な。急いで来たんだから仕方ないでしょ。」
あなた「私も仲間が死んだとき、1人で抱えようとしてたんだ。でも、そんなときに隣で受け止めてくれる人がいた。」
結果的には生きてたんだけど。
あなた「1回、全部吐き出してしまえばいい。気負わなくていいよ。必ずどこかで見てくれてるから、自分のペースで頑張ればいいんだ。」
『こんなことで僕が困るとでも思ってる?』
『あなたは弱いからさ、』
『僕がそばに居てやるよ。』
あなた「私がそばに居るから。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。