隣の部屋に通されて、ソファーに腰掛ける。
向かいには青宗とココ。
数年ぶりにこうやって話せるのだ。
喜んでもいいのかもしれないが、あくまで敵。
ココ「なんでお前東卍にいるんだ?」
張り詰めた空気を切り裂くようにココが口を開く。
言えない。
マイキーくんの呪いを祓うためなんて。
でも、今私が東卍にいる理由。
それは、呪いを祓うためだけではない。
あなた「入ったのは成り行きだけど…やっぱり楽しいから、かな。」
あなた「逆に聞くけど、なんで2人は黒龍に?」
青宗が黒龍を好きなのは知っている。
過去に聞いていた。
おれは真一郎くんの創った黒龍に入るんだ、と。
でも、青宗の入った時代の黒龍は青宗が好きな黒龍じゃなかったはずだ。
乾「俺達は、強い奴が好きだ。」
知っている。
でも、強さって喧嘩だけじゃない。
それを教えてくれたのは_______
あなた「アンタらのボスがのした、花垣武道って居たでしょ。喧嘩は弱いよ。私よりも。」
でも。
あなた「芯の強さだけは、誰にも負けないんじゃないかな。」
まっすぐと前だけを見つめている目。
青宗なら、アイツの目を見て何か感じるはずだ。
ココ「今、俺らが命を預けているのは、柴大寿だ。」
あなた「分かってる。でも、一回、ちゃんと花垣を見てみて欲しいんだ。今の黒龍は真一郎くんの創った黒龍とは違う。」
乾「そうだよ、今の黒龍は俺の憧れた黒龍じゃない。だから創り変えるんだ。」
無理だよ。
柴大寿は、そんな目的で黒龍をやっていない。
九井「お前は敵なんだ。今日お前を呼んだのは、東卍に居る理由を聞きたかっただけだ。」
乾「お前が東卍に居る理由と、俺らが黒龍に居る理由は全く違う。俺は黒龍を辞めねぇよ。」
黒龍を辞めろなんてことが言いたかったんじゃない。
ただ私は、2人がこれからも犯罪を犯し続けていくことが怖いだけだ。
黒龍がこの状態の限り、2人は犯罪から手を洗うことはできないだろう。
そんな思いも虚しく、三ツ谷くん達が帰るときに私も部屋を追い出されてしまった。
千冬「結局、八戒は黒龍に行っちまうって話だな。」
幹部会とさっきの話し合いの結果は聞いた。
家庭の事情に、私達は深く入り込めない。
私の家庭だって、決して恵まれている訳ではない。
高専のみんなだって、複雑な家系の人がほとんどだ。
自分の立場に苦しめられている人も多い。
三ツ谷「生まれた環境を憎むな。」
この言葉は、私の胸に大きく響いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。