千冬side
あなたに頭を撫でられるうちに、少しずつ心が落ち着いていくのを感じた。
場地さんは俺らのために死んだ。
場地さんが残していったもの。
それを無駄にしてはいけない。
あなたから体を離す。
千冬「ごめん、肩、濡らした。」
あなた「いいよいいよ。ペヤング買いに行く?」
いつものように歯を出してニカッと笑うコイツと、場地さんの笑顔が重なる。
『私が、そばに居るから。』
『ありがとな、千冬。』
これから先、この言葉に何度も救われることを俺はまだ知らない。
あなたside
私は少しでも千冬の力になれたのか。
これで千冬は前を向いて歩いていけるのか。
私だってまだまだ未熟だ。
バジくんが死んでからマイキーくんとも話した。
マイキーくんは変わった。
それも悪い方向に。
表面上では前を向いている。
人に弱みを見せられないのだ。
マイキーくんの胸に濃く染み付いた呪いは、もう私1人でどうこうできる呪いではなかった。
____________五条先生、やっぱり私には無理みたい。
数日後。
私は1人でカラオケに来ていた。
唯一呪いやタイムリープのことを相談できる五条先生は、生憎今日まで出張だ。
思いっきり声を出してストレスだけでも発散しようとしたのだ。
元からこれでスッキリするなどとは思っていなかったのだが、本当に、全くと言っていいほど気持ちが良くならなかった。
帰り道。仲良さそうに肩を並べて歩く男女2組が視界に入る。
このやろう。
クリスマスも近いのに非リアの私の前で。
私は今最高にイライラしてんだ。
一発ぶん殴ってやろうか。
…………………待て、あの金髪。
あなた「タケミっちー!」
くるっと同時に振り向く4人。
見せつけてんのかコノヤロウ。
つかつかと近づく。
武道「あなた!?」
あなた「お前彼女いたの?」
武道「あ、うん、一応、ね。」
ヒナ「ヒナですっ。よろしくね。」
照れんなコノヤロウ。
ヒナちゃんの可愛さに免じて許してやる。
もう1人のデカい男と目が合う。
あなた「三ツ谷くんにひっつきまわってる子だ!」
八戒「千冬と一緒にいる子じゃん!」
同時に言って、プッと吹き出す。
私達、相性いいんじゃね?
柚葉「コイツの姉、柚葉。よろしく。」
姉ちゃんか!許す。
ブーーーーーーン
白い特攻服に身を包んだ暴走族が近づいてくる。
背中には"BD"の文字と共にドラゴンを連想させる模様。
九井「これはこれは、"若"じゃねえかよ!」
__________ココ。
嫌な予感は的中する。
真ん中で丁寧に分けられた金髪。
気だるそうに開いている目。
大きく残っているやけどの傷。
せっかく忘れられたと思ったのに。
あなた「_________________青宗、」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!