昨日から薄々気づいていたが、記憶の無い黒子はやけに臆病だ。
前の中学生とは思えない程の度胸は感じられない。
中一ならこれくらいが罵倒だろうか
ダメだこりゃ
本当は放課後に行く予定だったけど、今の黒子じゃあ学校は当分無理そうだ
いつだって、まじめで
加害者ですら救おっとするし
困ってる人が居たらほっとけない。
この子はいつからか私の光
そうなっていたんだ
私に持っていないモノばかり持っているこの子が
昔もこの距離で歩いた事はあったが、その時は毎回黒子が腕を絡めてきたし
この距離で歩くとなると
何故こうも毎回私と離れると言うとこの子は泣きそうな顔をするのだろう。
歩く距離なんてそんなないと思うんだけど
あぁ。これは墓穴を掘ったな
今にも泣きそうな顔でこちらを見てくるし
だから、仕方ないのよ
私よりも一回りくらい小さい手
昨日も思っていたけど、黒子って案外小さいのよね
こんなに小さい身体にどれだけの想いを込めてきたんだろう
そう考えると
今の黒子を甘やかすのはいいかもしれない
繋いだ手の温もりを逃がさぬよう私は握る手に少しだけ力を入れた
そうすれば黒子も自然と力を入れ返してくれる
そんな些細な事も嬉しいと感じながら
病院への道を歩く
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!