「あの、トイレ何処だっけ」
『そこでで右の突き当たり!』
トイレの場所が分からないのは、
夫の熊原健人。これでも一応プロ野球選手です。
そして現在私は、第1子の出産間際。
陣痛が始まって、分娩室に入ろうとしています。
『なんでトイレの場所くらい覚えないかな、
病院ついた時教えたのに、本当に天然だな。』
それしても帰ってくるのが遅い。
あのバカ、また迷ってんのかな
「あったあった!ふー迷っちゃって」
『なんで来た道を戻れないのよ。
やっぱ宇宙人なの!あんたは!』
「そんなわけじ((『うっっっ』
あなた!あなた!大丈夫?!」
『先生っ、呼んで、、、』
「分かった行ってくる!」
『ちがくて!馬鹿なの!ナースコール押してって言ってんの!このド天然やろう!』
「おっけー!今押すから!」
・
・
「はぁぁぁ焦った、よかった無事で」
『無事も何も、ただの出産ですから。』
「だよね。
そう言えば名前は?決まった?」
『もちろん、』
2900gの男の子。
健人のように優しい子に育って欲しいので
熊原優人と名付けます。
『優人。優しいに人で優人。』
「可愛い名前だね。」
『漢字間違えないでね。』
「わかってるよ」
『そう言って間違えるよね』
「それは振り?」
『バカ言ってんじゃないわよ?』
夫はドが付くほどの天然です。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。