ガサゴソ、と音を立てながら荷物の整理をする。
寝て起きたら昨日の不安も少しは薄れて、私は朝から退院のための荷物の整理をしていた。
急に私の背後に誰か現れたと思ったら、それはよく知った人物だった。
彼女の名前は一宮尋葉。中学からの親友で、私が所属する写真部の仲間でもある。
ちなみに秀も写真部員。よく喧嘩するけど何だかんだ趣味は一緒だしなんなら苦手なものも一緒。大変遺憾である。
そう言って尋葉が指さした所には、お見舞いの品の中でもお気に入りだったシンプルなクマさんのぬいぐるみ。
私はそう言ってから、手に取ったぬいぐるみに目を落とす。
···器用だなぁ。
私だったらこんな売り物みたいな作品作れないよ。さすが元手芸部。高校に手芸部がないからって私が部長の写真部に入ってくれたけど、やっぱ少し勿体ないなぁ。
まぁ、完成した作品を撮影した写真はめっっちゃ可愛いのは変わりないけど。
そうして尋葉にカバンを渡せば、尋葉は散らかるお見舞いの品を丁寧にカバンへ入れ始める。
尋葉に促されて立ち上がる。
衣類は一番初めに整理したから、次片すのは小物類。一応さっき整理する物を一箇所に集めたけど見落としがないかな、と部屋を見渡す。
───すると。
低い棚の上に、ひとつの箱。
今年の春に学校の桜の木の下に埋めた、写真部四人のタイムカプセル。
赤い缶箱の側面に“TimeCapsule”とカッコつけた英字が書かれているから間違いは無い。
それに、とタイムカプセルを手に持って、それを親指の腹で撫でる。
カサリ、と音がして、砂がパラパラとこぼれ落ちた。
まるで、“今”掘り起こしたみたい。
まさか掘り起こしてないよね?なんて疑いの目を向けてくる尋葉。
違います!私やってません!!冤罪です!!
二十歳になるまで掘り起こさにないと約束したタイムカプセルが、なぜここにあるのだろう。
検討もつかなくて、少し怖い。
尋葉がいて良かった。
一人だったらきっと、怖くて震えていたかもしれない。
川に落ちるし、記憶なくなるし、なぜかタイムカプセルここにあるし。
ほんと、散々だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。