第6話

探し物
17
2022/09/25 08:00
白菊 秀
白菊 秀
天音、そっちは何か収穫あった?
白菊 天音
白菊 天音
···ない。そっちは?
白菊 秀
白菊 秀
ねぇな
白菊 天音
白菊 天音
だよね〜
白菊 秀
白菊 秀
そろそろ活字アレルギーになりそう
白菊 天音
白菊 天音
元々でしょ
白菊 秀
白菊 秀
そうだったわ。ちなみにお前もな
白菊 天音
白菊 天音
当たり前じゃん。活字なんて読めるわけない
白菊 秀
白菊 秀
じゃあ何で図書館来たんだよお前
白菊 天音
白菊 天音
秀もね
白菊 秀
白菊 秀
···
白菊 天音
白菊 天音
···
白菊 秀
白菊 秀
···来る場所間違えたな、俺ら
白菊 天音
白菊 天音
···だね
私と秀はそうしてパタンと開いていた本を閉じた。

三つのタイムカプセルが見つかった翌日、私と秀は朝から図書館へ行って“記憶喪失”について調べていたが収穫はなし。
どれも記憶喪失のメカニズムを解説しているだけの本だった。
白菊 天音
白菊 天音
どうしよ〜!タイムカプセルにヒント少なかったから何かわかるかと思って図書館来たのに何も分からない〜!!
白菊 秀
白菊 秀
夏休みなのに人誰もいねぇし···なんか一生懸命本読んでる俺らが馬鹿らしくなってきた
白菊 天音
白菊 天音
うぅ···明日の部活までには何かヒント見つけてくる!!って尋葉にメール送っちゃった···
白菊 秀
白菊 秀
馬鹿だろって言いたい所だけど実は俺も岬に同じこと言ってんだよな···
はぁ···と二人でため息をつく。

無謀な約束をしてしまったと今更後悔しているがもう遅い。せめてひとつは収穫しよう。

私はそう決意して、机に置いていたペットボトルの麦茶を飲んだ。
白菊 天音
白菊 天音
ぷはっ!よし!活字アレルギーに効いた!!
白菊 秀
白菊 秀
麦茶が!?
白菊 天音
白菊 天音
気がする!!
白菊 秀
白菊 秀
気がするだけかよ!!




翌日。
一宮 尋葉
一宮 尋葉
···で?本借りて家で読んで徹夜までしたのに結局収穫なしってことかな
白菊 天音
白菊 天音
はい···
白菊 秀
白菊 秀
すみません···
一宮 尋葉
一宮 尋葉
いや、収穫がなかったことに怒ってるんじゃないのよ私は。徹夜して朝方にコロッと寝こけて部活に大遅刻したことに怒ってんの。分かる?
白菊 天音
白菊 天音
分かります···すみませんでした···
白菊 秀
白菊 秀
申し訳ないです···
一宮 尋葉
一宮 尋葉
しかも天音は部長。部長が徹夜して遅刻ってそりゃないでしょ
白菊 天音
白菊 天音
はい···おっしゃる通りです···
蘇芳 岬
蘇芳 岬
ま、まぁ尋葉。いつも朝一番に来る二人だから今回はめずらしいことだし、そんな怒らなくても···
その岬の言葉に、尋葉は深いため息をついて部室の椅子に腰を下ろした。
一宮 尋葉
一宮 尋葉
だからこそだよ。部室のドア開けたらいつも「おはよ」って大きな声飛んでくるのに今日は静かだったから何事かと思った···一時間すぎても二人とも来ないから事故にあったんじゃないかって心配してたんだから
蘇芳 岬
蘇芳 岬
そうだね···それは本当に焦った。何か事件に巻き込まれたんじゃないかって危うく110番するところだったよ
白菊 天音
白菊 天音
過保護···
白菊 秀
白菊 秀
何か親が増えた気分だな···
一宮 尋葉
一宮 尋葉
実際、私と岬は二人の半保護者だけどね
蘇芳 岬
蘇芳 岬
うん、白菊ツインズのお母様から「よろしくねぇ〜!」って言われてる
白菊 天音
白菊 天音
待ってなにそれ初耳
白菊 秀
白菊 秀
何やってんだよ母さん···
一宮 尋葉
一宮 尋葉
でも二人とも危なっかしいじゃん
蘇芳 岬
蘇芳 岬
天音なんて入院したばっかりだしね
白菊 天音
白菊 天音
ゔっ···痛いとこ突かないで···!
一宮 尋葉
一宮 尋葉
まぁ白菊ツインズはチョロくて手網は握りやすいし別に困ってはないよ
白菊 天音
白菊 天音
···え?い、今、ディスられた···?
白菊 秀
白菊 秀
チョロいのは天音だけだろ。てか白菊ツインズやめろ。普通に呼べ普通に
白菊 天音
白菊 天音
え?チョロいのは秀の方でしょ?
白菊 秀
白菊 秀
はぁ?言いがかりはやめろよな
白菊 天音
白菊 天音
えぇ?そっちこそやめてよ
白菊 秀
白菊 秀
は?
白菊 天音
白菊 天音
は?
一宮 尋葉
一宮 尋葉
あーーー!はい!ストップ!!
白菊 天音
白菊 天音
でも秀が···
白菊 秀
白菊 秀
天音が···
一宮 尋葉
一宮 尋葉
ここに杉山さんちの駄菓子あるけど
白菊 天音
白菊 天音
秀ごめんね
白菊 秀
白菊 秀
天音ごめん
一宮 尋葉
一宮 尋葉
やっぱチョロい
蘇芳 岬
蘇芳 岬
あはは···
そうして尋葉から差し出されたお菓子が入ったビニール袋を漁る。

···あ!私の好きなやつ入ってた!
白菊 天音
白菊 天音
これ!私これがいい!
白菊 秀
白菊 秀
えぇ···俺もそれが良いんだけど
一宮 尋葉
一宮 尋葉
大丈夫大丈夫。そうなると思って二個買ってあるから
白菊 秀
白菊 秀
マジ!?尋葉天才!
白菊 天音
白菊 天音
やったー!!
そんな様子をどこか遠くを見るように眺めていた岬が、ふと呟いた。
蘇芳 岬
蘇芳 岬
···双子だなぁ
ちょっと、寂しそう。
白菊 秀
白菊 秀
ほら、岬。お前の分もあるってよ
蘇芳 岬
蘇芳 岬
ほんと?ありがとう尋葉!
一宮 尋葉
一宮 尋葉
いーえ。その代わり、次の作品のモデルにさせてね
白菊 天音
白菊 天音
えっ、モデル?人形とか作るの?
一宮 尋葉
一宮 尋葉
動物のぬいぐるみだけど?
白菊 秀
白菊 秀
いやそれ俺らモデルになんのかよ···
一宮 尋葉
一宮 尋葉
なるなる。ほら食べて。食べてるとこ写真で撮らせて
尋葉はそう言ってカメラを構える。
一宮 尋葉
一宮 尋葉
···思い出なんて、すぐ忘れちゃうからさ。今撮っておかないとね
白菊 天音
白菊 天音
···え?何か言った?
一宮 尋葉
一宮 尋葉
んーん、なにも
白菊 天音
白菊 天音
?そっか

そして何も分からないまま、また一日を終えた。

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