西川さんは、ガラスの向こう側、つまり外に立っていた
傍から見たら誰かを待っているようだったが、いつまで経っても動かないし誰も来ないようだ
無視して帰るのも気が引けるので、軽く声をかけてから帰ろうと思った
彼女はとても驚いたのか、目を開かせてこちらをじっと見つめていた
澄んだ、汚れの無い瞳で
西川さんはよく笑う
まだ少ししか話していない俺に、キラキラした笑顔を向けてくれる
その笑顔に引き込まれるかの様に、俺は西川さんを見つめていた
すると西川さんは何か思いついたのか、ぱっと表情を明るくしてスマホを取り出した
そう答えると西川さんは、スマホ画面に何やら打ち込み再び僕の方に向いた
女子からのお誘い
それは俺が最も苦手としているモノ
しかし西川さんからのお誘いは、何故か俺を高揚させた
全然嫌な気持ちにならなかったのだ、むしろ求めていたくらいに
だから俺は笑顔で頷いたさ
俺が笑顔で頷いた事に、ある意味ビックリしたのだろう
今迄俺は一人で帰っていたし、こういった誘いにも断ってきたから
西川さんは驚いた表情を一瞬見せて満面の笑みにすぐさま変えた
そして俺の隣に来て
そう言った後、俺達は並んで歩き校門を出た
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!