第5話

私の昼休み
386
2020/09/08 10:07
家に帰ったらまたお父さんたちに色々言われるんだろうなとか思いながら、屋上に行った。

屋上は普段からいちおう開いてるんだけど、風は強いし肌寒いしなかなか来る人はいない。

人がいたとしても、大抵私のような静かで友達がいない人がほとんどだから、あまり気にしない。

ドアを開けると、この辺に普段からいる鳥さんたちがやってくる。

弁当を食べきれない私は、鳥たちに弁当をあげて誤魔化しているのだ。

残したらお母さんから怒られるのは分かってるし。
ピピッ
あなた

どうぞ、

フタを開けて少し離れると、あっという間に鳥が寄ってくる。

それを横目に見ながら、ポケットからスマホを取り出してTwitterを開く。

「昼食なう 今日は24時過ぎからね」
とツイートをすると、あっという間にいいねが付く。

「把握です!」

「楽しみにしてます!」

「午後も頑張ってください!」

等のリプライを見て頬を緩ませた時、足音がしたので慌てて戻す。
生徒会長
……………あ、
あなた

……………………

一瞬目が合った瞬間、私は立ち上がった。

そのまま、早足でその場を離れる。

全く。つくづく、今日は運が悪い日だ。
*****
そのまま、別棟にある図書室に足を運んだ。
司書の先生
あらあなたちゃん。いらっしゃい
カウンターから声をかけてくれる司書の先生。

それに頭を下げて、本棚を見る。

今日は5月最初の月曜日だからか、新しい本が出ていた。
司書の先生
あぁそれ?週末に届いたから今日出せるようにしておいたの。あなたちゃん好きそうだなって
そんな私の様子を見てか、声をかけてくれる先生。

去年からの常連だからなのか、先生はたまに私の好みに合うものを用意してくるから驚く。

ちなみに今私が手にしているのは、「Since1998.」という本。

告知がTwitterで流れてきて、読みたいと思っていたものの1つ。

最近、ネットが普及してきて「ネット活動者」とか、「YouTuber」とかっていう職業・キーワードが少しずつ一般化してきてる中で、この本はネット活動者が主人公の本。

生きる気力もなく、居場所もなく、そんな中でネットの世界に出会ってそこから主人公が歩んでいく様子が描かれている本だ。

そういう境遇だからネット界にいるたくさんの悩みを抱えている子達の共感を呼び、今ちまたで話題の作品。

ネット活動者で似た境遇の私としては、すごく興味があった。
司書の先生
借りてく?
表紙に見入っていた私を見兼ねて、先生が声をかけてくれた。
あなた

借り、ます

小声になってしまったけれど、先生には届いたようで。

それを聞いて、嬉しそうに微笑んだ。

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