あなた : 準備できた?
廉 : えー、まだ時間あるやん…
あなた : 早くしてや…いつもそうやってのんびりしてるから遅れるんやで?
廉 : お姉は急ぎすぎや、もうちょっとゆっくりしても…
ぶつぶつと文句を言いはじめる弟を無視して1階のリビングルームへ向かう
そこには朝、母が準備してくれたであろう朝ご飯と1枚のメモが置かれていた
メモには
"あなたへ
お母さん今日早出の日やから廉のこと宜しくね
帰り雨降るかもしれんから傘持っていくように"
と手短に用件だけが書かれていた
母らしい字にくすり、と笑みをこぼした後、時計を確認する
あなた : 廉! やばい! もう7時30分やで !
廉 : 嘘やろ!? やば、俺今日日直やった!
あなた : ちょ、廉! 傘忘れてる!
廉 : どうせ一緒に帰るんやからお姉が持ってたらいいやろ!俺先行くからな!
そう言って廉は玄関からばたばたとでて行ってしまった
いつまでたっても治らない廉のマイペースさにはため息が出る
廉と5歳差の弟はもうすでに学校についているというのに…
あなた : 私も学校行かな…
傘を持った後、廉が出て行って少し静かになった家から出る
かちゃり、と鍵をかけて学校に向かう途中、あることを思い出した
あなた : あ、そういえば廉、今日委員会やなかったっけ
少しだけ雲の色が暗くなった気がした
- 雨が降りはじめるまであと3時間 -
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!