ーーー主役は我々だ高校。
それが私のこれから通う高校の名前。
正直、家から近いからって理由で決めただけなんだけどね…
そんなことより私は、今から入る学校から聞こえる美しい音色に惹かれていた。
微かに聞こえるだけなので何の楽器で弾かれているのか全然分からないが、三階は窓が開いているので、多分そこから聞こえてるんだろうな〜なんて予測してみる。
あなた(そろそろ体育館行かなきゃ、遅れちゃうかもしれないし!)
パタパタと足を走らせ、新しい色の上靴を履き体育へ向かう。
中はガヤガヤと忙しなく人が蠢めき、騒いでいる人も所々見かけた。
あなた(ずいぶん大きな体育館だなぁ)
なんて思いながら席に着き、親に持たされた時計で待ち時間は15分だと確認する。
あなた(待ち時間暇だなぁ…ていうか皆騒ぎすぎだよ〜!)
??「なぁなぁ!名前なんていうん!!」
??「ちょ!コネシマ、急にいきすぎやって!」
隣と見ると、金髪で活発そうな男の子が私に話しかけてきていた。
その隣には、この季節には少し珍しいニット帽に豚のバッチをつけた男の子が焦った様子でこちらをチラチラ見ていた。
あなた「あっ、私?…えっとあなたっていうんだ。宜しくね!」
??「あなたっていうんか!てかあなた知ってるか!この学校俺の知り合いおんねん!
あ、こっち俺の…なんやろ、まぁシャオロンやな!」
シャオ「あ、宜しくね〜…てか、コネシマ!お前も自己紹介しろや!」
??「あっ、忘れてたわ!俺コネシマ!よろしく、あなた!さん付けいらんよ、同い年やし。」
あなた「そうなんだ、シャオロンとコネシマね…!…というかコネシマの知り合いってどういう人なの?」
??「実はここの生徒会長やってるんよ!名前はな…グルッペンっていうねん!」
あなた(グルッペン…全然知らない人だなぁ)
カチッ
その瞬間、世界が一変した錯覚を覚えた。
体育館全体、消灯が落とされどこを見ても真っ暗で光がある所は目の前に見える舞台だけだった。
正確には光は2つあり、1つ目は舞台。
照明の眩い光が、舞台下の階段に上がる「彼」に当てられていた。コネシマもシャオロンも私も会場の全員が、舞台に上がる「彼」だけを見つめている。
「彼」 は、とてつもなく異様な雰囲気を放っていた。
黒いトレンチコートを見に纏い(そもそも学校にトレンチコートは許されているのか?)、それは階段を上がるごとにヒラヒラと揺れる。
まるで映画のワンシーンのようだと思った。
きっと「彼」は悪役なんだろうな。
ふとそう思う。
カツンカツンと音を立てながら舞台に上がり、教壇から彼は顔を上げた。
ここから見える彼の顔立ちは何にも表せないほどに美しく、思わず「綺麗…」と呟くほど。
煌びやかに輝くターコイズのように青い目に、すっとした鼻筋。1mm、1mm丁寧に整えられた金色の髪。極めつけにフッと笑う優しい表情によって、会場全体の脚光を浴びたのだった。
グルッペン「初めまして、皆さん。私はこの高校の生徒会長、グルッペン・フューラーと申します。えーまず、この度は本校にご入学して頂きありがとうございます。本校教員、生徒一同心よりお待ちしておりました。」
唖然とするほどのバリトンボイスに、またもや惹かれてしまう。凄い…と感嘆の声を無意識に出してしまう。
そしてコネシマの言葉を今更思い出す。
あなた(あっ、この人がコネシマが言っていたグルッペンさんという方!?こんな凄い人とコネシマは知り合いなの…凄すぎる…なんだか初日から凄い人と関わってしまった気がするよ…)
グルッペン「というわけで新入生の皆さん、是非とも楽しく本校で過ごして下さい。」
グルッペンさんは頭を深々下げ、すっと幕の方へと消えていった。
パチパチパチと拍手喝采が起こる。
終わりと同時に照明がつき、コネシマとシャオロンの姿がしっかりと視認出来た。
コネシマ「…すごかったやろ!!あなた!!」
シャオロン「いや〜身内から見ても凄かったわ〜」
あなた「うん!最初ビックリしちゃった…あまりにも綺麗な顔してるし、というか声凄く低い人なんだね!」
コネシマ「たしかにグルッペン声低いもんな〜!…お、てか校門前で配布されたパンフ見てみ、俺ら同じクラスだってよ!」
シャオロン「えまじか、」
あなた「というか皆移動してない?!もしかして自分たちの教室行くんじゃないかな…?」
シャオロン「多分そうやな、よし行くか!」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。