第3話

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2020/08/17 02:44
ふっと視線を下に下ろすと、彼が着ている制服が目に入った。

「あっ…同じ制服」

「うん。ここ、この高校の旧校舎なんだから、当たり前だよ」

意外と思ったことはストレートに言うらしい。

私は苦笑いを浮かべながら「えっと…何年生なの?」と続けて質問をすると、「2」という言葉が返ってきた。

どうりで見たことがないはずだ。

記憶力がない私でも、同じ学年の人なら名前は知らないとしても顔くらいは覚えている。

そうなると、1年生か2年生かだと思ったのだ。

「じゃあ、私先輩だね!3年生だから!」

なるべく明るく言うと、彼はすっと立ち上がって私の方を向いた。

「葵さん、授業、出なくていいの?3年生なんだったら、受験生のはずなのに」

彼がそういった途端、新校舎のチャイムが鳴ったのが聞こえた。

彼は、探りを入れるかのように、私の目をじっと見つめる。
その眼差しが、まるで心の中までも見透かしてしまいそうで、ほんの少し肩が震えた。

「そ、それは…いいのっ!」

私は返す言葉が見つからず、無理やり言い放った。

ーーそう。

今鳴ったのは、ちょうど午後の授業が始まるのを知らせるチャイム。
この学校の生徒なら、これが聞こえる前に席に着くのが普通だろう。

それなのに、私は席どころが教室にも行っていない。おまけに、新校舎ではなく、少し離れた旧校舎にいる。

これは普通ではない。ーーこの学校の生徒なら。


「それより、優くんだってこんな所にいちゃダメでしょ」

彼だって、本当なら今頃教室にいるはずだ。
さっき言っていた『逃げてきた』という言葉と関係があるのだろうか。

そう思って、私もすかさず反撃をする。

「僕は、いつものことだから」

それだけだった。私はあんなに焦ったのに、彼は当たり前かのように言う。

なんだかずるいと思った。

「優くん、いつもここにいるの?」

「うん」

「どうして?」

すると、彼は少し黙ってから、

「行きたくないから」

と言った。

「え…行きたくないからって…そんな簡単に…」

私は苦笑いを浮かべた。

「う〜ん」

「簡単では、なかったんだけどね」

「え…?」

私は頭にはてなマークを浮かべていると、当の本人はまたふっと笑った。










「僕、いじめられてるから」

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