第4話

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2020/08/21 22:08
「え…」

予想もしていなかった理由に絶句する私と悠々と空を眺めている彼。
思わず口があいたままになる。

再度沈黙が訪れる。
元から静かだった教室が、余計に寂しさを増したように思えた。

それからどれくらいたっただろうか。

先に沈黙を破ったのは彼だった。

「…それだけだから」

そう言うと、彼は一瞬目をこちらに向けたかと思うと、すぐに目を逸らし「戻んなくていいの?」と無愛想につぶやいた。

「戻るって…どこに?」

「どこって、教室でしょ。授業、終わっちゃうよ」

教室。

みんながいる教室…。

「いやだ。行きたくない」

私の答えに、彼は特に気にする様子もなく、まだ窓の外を眺めている。

「えっと…優くんはいつもここにいるんだよね?私も…一緒にいても、いい?」

思わず言ってしまった。

え、という短い声が聞こえる。
どうか理由は聞かないでと心の中で念じながら、彼のーー優くんの目をじっと見つめた。

「別にいいけど」

「えっ…!ホント?」

「別にこんな事で嘘つかないけど」

「…わ、分かってるよ!嬉しい時はみんなそういうでしょ!」

「知ってる。ちょっとからかっただけ」

優くんは、そう言うと私に向かってふっと笑顔を作り、口を開いた。

「へぇー、嬉しいんだ?」

その瞬間、私の顔があつくなっていくのが分かった。心臓の音がやけにうるさい。

「なっ!ゆ、優くんてそういう人だったんだ〜!」

「え、なに?そういう人って?」

明らかに私で遊んでいるのが分かった。その証拠に、顔はどこかいじわるっぽく笑っている。

「っ…!意外とタラシだったから!もっと優しくて、大人な人かと思ってたの!」

「大人って…僕の方が年下なんだけど」

あっ…!
言われて気づいた。というか忘れていた。
彼が同じ学年の周りの男子よりもずいぶん大人びていたから。

「ていうか、先輩なんだから敬語使いなよ」

私もすかさず突っ込んだつもりが、「先輩って感じしなくて忘れてた」と言われた。
軽く悪口を言われた気分で、なんとなくやり切れない。

さっきからうるさく響いている、この胸のドキドキはなんだろう。
こんな感覚は、初めてだった。

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