あんな出来事から何日か経ったとある日ーーーーーーー。
大きく伸びをする私。
今日は何故か早く目覚めたため、せっかくだからと朝日を浴びようとベランダにやってきたのだ。
まだ朝日が出てすぐに起きた私。
下の道路を覗くと、走っている人や犬の散歩をしている人がいるくらいだ。
えへへと頭を掻く私。
私はベランダの手すりに手をかけて、はぁっとため息をついてから自分に言い聞かせるようにこう呟いた。
少し自分が想像した地獄の様子が浮かび上がる。恐怖のあまりに首を横に振って吹き飛ばそうとする。
ふふっと笑みがこぼれる私。
私は恐る恐る自分の両手を見つめる。
そこには、自分の手が前より薄くなっている時とがあからさまにわかった。
自分でもわかることだった。誰が見たってわかる。こんなに薄くなるなんて……。
私はみんなに手を見せないように心がけることにした。
私はふと思いついたことを口にする。
そっと下の道路を見つめる。誰が見ても穏やかな日常が広がっている。
しかし、私が考えていることは残酷だった。
私はハッとする。自分で何をいっているんだろうと下を見るのをやめる。
名前を呼ばれたような気がして後ろを振り向くとりくくんがハッとした顔で立っていた。
いつも違うような気がする。でも……さっきの話は聞いていないはず。
またいつもの彼に戻る。さっきのは気のせいだったようだ。
彼はそっと私の耳元に口を近づけた。
私は先ほどの考えを忘れようと彼の意見に乗った。
私は先ほどの考えを……自分の過ちだと忘れようとした。
しかし、彼は彼女に危険が迫っているのではと考えてしまっていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!