第53話

だい。よんじゅうろくわ
444
2020/03/05 09:29
日に日に私の中で何かが足らなくなって行くのを感じていた。
あなた

…………なんだっけ。

マサイ
マサイ
ん?どうした?あなた?
あなた

え〜っと………。

あなた

名前なんだっけ………。

マサイ
マサイ
…………俺はマサイだよ?
あなた

あ、そうだった!ごめんね!

マサイ
マサイ
う、うん……。
マサイ
マサイ
(俺の名前を忘れかけてた……?)
マサイ
マサイ
あなた。
あなた

ん?

俺の気のせいか?いつものあなただよな……?
マサイ
マサイ
…………最近、おかしいぞ?
あなた

…………おかしいか。そうだよね。

静かに彼女は瞼を閉じた。何かを物語るように静かに語り始めた。
あなた

…………最近ね。忘れることが本当に多くて。

あなた

家族だったり、過去のことだったり。………そして、名前とか。

あなた

…………もう、この世界にいることが難しいんだと思う。

マサイ
マサイ
そんなことない!
マサイは思わず叫んでいた。
マサイ
マサイ
お前がいなくなるわけがない。なぁ……そうだろ?
あなた

マサイ………。

マサイ
マサイ
俺は絶対お前を失ったりしない。………必ず。
あなた

そんなことを言ってくれるなんて……。嬉しいよ。

あなた

でも………。こうしている間も私の崩壊は進んでいるんだ。

あなた

見て?

私は両腕をマサイに見せてみる。
マサイ
マサイ
…………え?
あなた

だよね……驚いちゃうよね。

そこには、今までより薄くなっている腕だった。もう、床の色彩まで見えてしまっている。
あなた

少しずつ、この世界から消えていっているの。

あなた

………まだ、最近の話なんだけどね。

マサイ
マサイ
………やだ!あなたがいなくなるなんて……。
あなた

………でも、まだ猶予があるの。

あなた

あと……一ヶ月くらいかな。

マサイ
マサイ
そんな…………。
あなた

で、マサイ。

あなた

話があるんだけど、私との約束守れる?

マサイ
マサイ
え?
彼女は自分が消えるという話をしていたにもかかわらず、笑顔だった。
そんな、眩しい笑顔を見せる彼女がこちらを向いて笑ってみせ、こう言った。
あなた

私のわがまま、聞いてくれる?

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