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2021/07/03

第5話

桃太郎神社5
紆余曲折を経て、目的地にようやくたどり着く。
時刻は23時を指していた。

「ふーん、んじゃちょっと犬山城見に行こうか」

「せっかく着いたのに!?」

あまりにも理不尽な要求に思わず声を荒らげると、一宮はケラケラと笑い

「マジだよ」

と言った。

どうしてだよ、どうして冗談じゃないんだよ。

「はぁ~……」

深い深いため息をつくも、出発を促すようにシートベルトをカチカチとつけたり外したりする一宮に苛立ち、結局エンジンをかけて犬山城へ向かった。

距離的には微妙に遠い、とはいっても同一市内だし車で5、6分なのだけれど、街灯の少ない川と山に挟まれたグネグネ道を走るのは、なんとなく神経をつかう。

「やっぱ犬山城じゃなくてー」

「はぁぁ!?」

目前まで来たのにも関わらず、またも思いつきで目的地が変更になった。

「ひばりヶ丘公園で夜景でもみようか」

「もう充分夜景満喫してるような状態なんですよこっちは!」

川沿いを走らせてる間に対岸の光でキラキラ輝く水面を見たし、ライトアップされている犬山城も見た。
なんなら来る前に入鹿池だってみているのに、まだ眺め足りないのかこの人は。

結局心をへし折られ、10分かけてひばりヶ丘に到着したのち、私はもう動きませんよ!という意思表示のつもりでエンジンを切った。

「んんん、疲れたー」

「貴方が言ったんでしょ、あっちいこうこっち行こうって!」

「そうだね。まぁでも時間潰さないとだからさ。それにここはここで用事もあるし」

用事?何も知らされていないが。

「いやまぁ心霊絡みというよりは……あ、ちょっと先に行ってて、忘れ物した」

「はぁ、何か忘れるようなものありました?」

「え?あー、えっと……携帯?」

「なんで疑問系なんですか……」

不審に思いつつも車の鍵を渡し、階段ではなくスロープの方からぐるりと回って坂道を登る。

すると

「おー、姉ちゃん、1人ー?」

「ねぇねぇお姉さん、俺ら男だけで淋しいから相手してよー」

「相手つってあれだけどね、もちろんこっちのお相手ね」

下衆で下品な男たちに囲まれてしまった。

「いえ、結構です」

恐怖で声が震える。

「はぁ?拒否権あると思ってんの?」

「連れがいますので」

「え?連れって女の子?なら一緒すればいいじゃん?」

「いえ、男です」

「彼氏かな?まぁ関係ねぇけど。おい、男が来る前に連れてくぞ」

「抵抗すんなよ、俺らだって腫れ上がった女の顔見ながらだと萎えるんだから」

「とか言いながらお前殴りまくるじゃねぇかよ」

助けて、一宮さん、と心で叫んでいるものの、腕を掴まれ、これから何をされるか想像してしまった私は、怖くて声に出せず口をパクパクさせることしか出来なかった。

「やぁお待たせ」

「あぁん?」

「んだよ、モタモタしてるから来ちまったじゃねぇか」

「まぁ彼氏の前でってのもまたいいだろ。おら、さっさとネンネしな!」

彼らの中で1番筋肉質な男が、一宮に殴りかかる。

「おっとと」

「なっ、コイツ避けるのうめぇ!」

「おいおいどうしたんだよ砂防、酔っ払ってんのかぁ?」

ひょいひょいと、砂防と呼ばれた男のパンチを一宮は避け続け、そして

「はぁ、もう面倒くさい」

「うおっ!」

正面にまっすぐ飛んできた拳を、下から上に手のひらで押して、そのまま砂防を一回転させた。

「なんだこいつ……!」

「え?一宮 生、霊能力者だよ」

何故か自己紹介をする一宮に、私は呆れながらも周りの男たちを見ると、何故か笑うでもなくビビるでもなく、ただただ呆然としている。

妙な反応を見て、一宮は一瞬で私の目の前まで距離を詰めると、掴まれていた腕を解放し、逆に私を掴んでいた腕を捻りあげた。

「いてててててっ!」

「ところで、君たちにはきつーいお仕置が必要みたいだね。生霊連れてきたよ」

ひょっとして忘れ物って。

彼の手を見ると、ポケットからボールペンのようなものを取り出し、指の間でポキッと折っていた。

『よくも、よくも俺の彼女を!』

『娘を返して!!』

『一生許さない……!』

「ほら、今までの悪事の業だ、全部受け取れ」

「「「「ひぃぃぃ!」」」」

4人一斉に、一目散にスロープを上り、その先の丘を転げ落ちていく。

『逃がさん!』

生霊や怨霊も連携をとって男たちを追いかけていき、残されたのは私と一宮だけだった。