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2021/06/20

第4話

桃太郎神社4
「ねぇ、あれは?」

ボートのうち1つで、黒い何かがモゾモゾ動いているのをみつけて、私は一宮に問う。

「子捨てか事故か。浮かばれない子供の霊だねあれは」

顔をしかめ、スタスタとボートに向かいながら彼はそう言い捨てた。

「どうするんですか?」

「まぁ悪さを何かしたとかでないからこのまま送るけど。はぁー、前来た時はこんなのいなかったんだけどなぁ」

瞬間ボートから光の柱が立ち、黒い塊は消え失せた。

「なんか気分も台無しだよ、そろそろ向かおうか」

しょんぼりとしながら戻ってきた彼を待ち、再び車のハンドルを握る。

「ここ出たら左に行って、橋を渡って真っ直ぐ行けば近いから。ごめんね、ひと眠りするね」

「わかりました」

消すより送る方が疲れると言っていたのを思い出し、眠るのを止めずに言われた通りに車を走らせる。

橋を渡ってすぐ、右側からゾクッとする視線を感じたけれど、一瞬のことだったので無視をした。
多分その場所に留まる類いのものだろうから。

クネクネとした山道を走りながら、トンネルをいくつか抜け、周りに車がないことに違和感を覚えながら突き進んでいると

「あ、ちょっと路肩に停めて」

「うぉぅ!は、はい」

いつの間にか起きていた一宮に突然声をかけられ、驚きでハンドルを切りそうになるのを頑張って律して、指示された通り路肩につけてハザードランプを焚いた。

「うんうん、収穫あり」

「?どういうことですか?」

彼は私に目配せし、シートベルトを外して車を降りると、トンネルの手前にある大きな石に座る白髪の少女に話しかけた。
ここからでは内容は全くわからないが、女の子はケラケラ笑っている。

……え?女の子がこの時間に1人で?もう寝る時間じゃないの?

「ふぃー、ただいまー」

「お、おかえりなさい?いやじゃなくて、何ですかあの子は」

「人間みたいでしょ?あの方は精霊だよ」

「精霊……」

話で聞いたことはあるけれど、実際見るのは初めてだった。

「道路作る過程で山を削られまくってめちゃくちゃ怒ってた時期もあったんだけどね、人の営みに対して寛容なここの神様が止めててくれたからまだ20人くらいしか殺してないんだってさ」

「そうですか……ってはぁぁぁあ!?」

20人殺したの!?精霊が!?

「まぁ彼女が本気出したらもっと死者でるからね、それこそ100人規模になるかな、村ごとドーンと」

「いやいやそんな軽い話じゃないですって!」

するとさっきまでニコニコしていた一宮はフッと表情を変え、真剣な面持ちで言った。

「これから向かう場所にいる鬼にとっても、さっき話したここの神様にとっても、遣いである精霊にとっても、人の命なんて羽根より軽いんだよ」