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第1話

1話
392
2021/12/17 14:03
『お前なんかいらない』

『あんたなんて産まなきゃよかった』























『早く消えてくれ』































(なまえ)
あなた
…さよなら。










そうして私は家を出た。
現在12月17日午後8時。
私は人生初の家出をした。
理由は単純。虐待といじめ。
私は学校でのいじめが原因で不登校になった。
最初のうちは両親とも私に勉強を教えてくれたりと、よく面倒を見てくれた。

だけど仕事が上手くいかなくなり、
夫婦喧嘩が増えた。
それがエスカレートし、今度は矛先が
こちらへ向いたのだ。
(なまえ)
あなた
…寒。
生憎制服以外は身にまとっていない為、とても寒い。
(なまえ)
あなた
これからどうしよう…
カバンの中にはスマホ、財布、そして












___カッターナイフ。
もちろん容易に使うつもりはない。
護身用ってやつだ。
(なまえ)
あなた
…とりあえず、河川敷にでも行こうかな
あそこなら多分、そんなに人もいないだろうし、
1晩くらい野宿でなんとかなるだろう。
本当はネカフェでも行きたいところだが、
お金は限られてる。
できる限り節約しなくては。
(なまえ)
あなた
さっっっっむ!!
思ったより寒いな…
川沿いなんて来るべきじゃなかったか…
(なまえ)
あなた
はぁ…まぁ…いっか……
今何時だろ…と、スマホの電源を入れると
不在着信が何件も入っていた。
家、学校、軽く20件は超えている。
(なまえ)
あなた
…心配なんてしてないくせに
そう思い、川へスマホを投げようとした。

その時だった。
ティロリン♪
『今日は23時!来てね!』
(なまえ)
あなた
…Twitter、か…
こんな最悪な境遇でも、今日まで生きてこられたのは他でもない、通知の主である『坂田さん』のおかげだ。
以前、ふと動画サイトを開くと偶然おすすめに出てきた彼__坂田さん。

優しい歌声は、空っぽの私の心に
刺さるには十分だった。
(なまえ)
あなた
…しまった、イヤホン置いてきた
これじゃあ配信どころか、
しばらく動画も見れないなぁ…
ねぇ、君、何してるん?




















___瞬間、時が止まった気がした。























(なまえ)
あなた
…えっ、




振り返った先にいたのは、心配そうな顔で
赤毛を揺らす『彼』だった。










坂田
坂田
えっと……大丈夫?
(なまえ)
あなた
っ、え、な、なん、
なんで__坂田さんがここにいるの?
坂田
坂田
あ、えと!怪しい者じゃなくて…!!
坂田
坂田
そ、その、君高校生やんな??
こんな時間に1人でおったら危ないで?
(なまえ)
あなた
………
こんな素性の知れない高校生なんて、
ほっとけばいいのに。
きっと彼は動画の通り、優しいのだろう、とても。



……でも、油断できない。







今までだってそうだ。

優しいフリをして近付いて、利用するだけしたら
あとは捨てられる。
人間なんて、所詮そんなもん。




いくら大好きな彼であっても……
……だから
(なまえ)
あなた
…それ以上近寄らないで
警察呼びますよ


……ごめんなさい。


こんな態度しかとれないこと、
どうか許してほしい。
坂田
坂田
………
坂田
坂田
警察、呼んでもええよ?
(なまえ)
あなた
…は?
坂田
坂田
だって君、家出少女やん、見るからに
坂田
坂田
警察が来たら、君も困るんやない?
(なまえ)
あなた
………
もちろん警察なんてはったりだ。

彼の言う通り、呼べば困るのはこちらも同じ。
坂田
坂田
なぁ、君、ほんまは助けが
必要なんやない?
そう言って1歩、また1歩と近付いてくる。
(なまえ)
あなた
っ…来ないで
私は咄嗟にカッターナイフを取り出し、
彼に向けた。

すると流石に驚いたのか、一瞬動きが止まった。
が、ほんとに一瞬。


気にせずズカズカとこちらに向かってくる。
(なまえ)
あなた
…っ!?
坂田
坂田
ふふ、なんや、えらいびっくり顔やん
(なまえ)
あなた
…子どもだからってなめてます?
(なまえ)
あなた
本気で刺しますよ?
坂田
坂田
…ええよ、別に。
好きなとこ刺しーや。
坂田
坂田
でもな、俺がおらんくなったら、
困るのは君やで
…どういうこと?
坂田
坂田
ふはっ、顔に出過ぎやw
めっちゃキョトンとしとるww
(なまえ)
あなた
…さっきから意味わかんないんですけど
坂田
坂田
んー?まぁ、そやなぁ…簡単に言えば…













・・・・・・・・
俺が養ってあげる、てことやな
(なまえ)
あなた
…はい?
ますます意味がわからない。

養う?坂田さんが?私を?
何言ってんだ。
坂田
坂田
どうせこんなとこに1人でおったんや、
行く宛てなくて困っとったんやろ?
…たしかに、困ってた。
困ってたけど…
坂田
坂田
なぁ…そんなに嫌?
すっごいしかめっ面やで?
(なまえ)
あなた
…そりゃ刃物向けられて好きなとこ
刺せって言われて、挙句の果てに
家へ来いと言われれば、まぁ…
坂田
坂田
ちょちょちょ!語弊がある!!
坂田
坂田
別に俺はマゾやないで!?ヽ(`Д´)ノ💢
いや、それもだけど、そこじゃない()
(なまえ)
あなた
そもそも、私、あなたの
リスナーなんですけど
坂田
坂田
ん?知っとるけど…
え…()
坂田
坂田
だって、ほら、カバンにケンちゃん
付いとるやん
(なまえ)
あなた
…あ
ケンちゃんのキーホルダー。
私にとってお守りみたいな物。

そういえばずっと付けたままだったな…。
(なまえ)
あなた
…リスナーなら尚更、傍に置かない方が
いいんじゃないですか
坂田
坂田
そう思うんなら、大人しくお家帰りや
坂田
坂田
…でも、それが嫌やから
こんな寒い中1人でおるんやろ?
(なまえ)
あなた
………
坂田
坂田
な、家おいでや

あ、さすがにそれはしまってな?と言いながら
カッターを取り、私のカバンにしまう。
そしてそのまま私の手を引いていく彼。




その力は決して強くも乱暴でもなかった、
なのに、何故だろう。















___振り解けなかった。

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