『 離して … っ ! 』
「 嫌だ 、 絶対離さない 。」
抵抗する私さえも包み込むように 、 勝利は強く ぎゅう っと抱き締め続ける 。
『 ふりまわ … さない … でよ … っ』
「 … え ? 」
『 頑張って 、 気持ち抑えようとしてるのに … 。』
『 そうやって優しくされると 、 また 好きになっちゃうじゃん … 。』
「 分かってる … 、最低なことしてるって 分かってる 。 」
「 けど … 、 俺 分かんないんだよ … 。」
『 何言ってんの ?』
『 答えは決まってるでしょ 。 』
「 咲を 大事にしろって 、 言うんだろ … ? 」
『 分かってるなら 、 離してよ ! 』
「 しょ … り … ? 」
『 … え ? 』
急いで勝利から離れて後ろを振り向くと 、 今にも泣き出しそうな顔で咲ちゃんが立っていた 。
「 あ 、 咲 … 」
「 勝利の馬鹿 ! もう … 嫌い … 」
咲ちゃんは 、 そう言い残して 走って行ってしまった 。
「 … っ 」
『 早く追いかけなよ 。』
「 でも っ … 」
『 勝利が何に迷ってるかなんて 知らないけど 、 今は咲ちゃんの彼氏なんだから 、 追いかけるべきでしょ 。 』
「 ん … 、分かった 。 行ってくる … 。 」
勝利が 、 咲ちゃんを追いかけて 見えなくなった途端 、 急に また 泣けてきた 。
『 もう … こんなの 辛いよ … 。 』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。