第10話

第2幕 3つの葬送曲 第8話
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2019/10/06 11:55


エミ夫人を見届けた馬車は、
スコットランドヤードへと進路を変え、
メアリーと、レストレード、そしてアランの3人を乗せて再び走り出す。









外から見れば
その馬車はただ静かに歩を進めているように見えるが、



車内はというと・・・









.
.
.
メアリー
メアリー
やったーーーー!!!
レストレード
レストレード
はい?!
メアリー
メアリー
これよこれ!私が求めていたのは!

謎めく暗号と、憂いを帯びた美人な依頼者!
まさに探偵ものの鉄板よね!



「こうしちゃいられないわ!」と言いながら、

身につけている装飾品を
全て外したかと思うと、

彼女は突然ドレスを脱ぎ始めた。


レストレード
レストレード
えっ?!ちょっ?!



あっという間にドレスがするりと落ち、
レストレードは慌てて両手で目を覆う。

が、しかし、それは結果的にいらぬ行為であった。
なぜなら、彼女はドレスの下に別の衣服を身につけていたからである。



黒い短めのワンピースに真紅のジャケット。

先程の華やかで麗しい淑女のドレスとは正反対の
活発で動きやすそうなものであった。




レストレード
レストレード
あ、あの・・・
メアリー
メアリー
ああ、驚かせてごめんなさい。

探偵のお仕事をするときは、
このスーツを着るって決めているの。

もちろん、いつ事件が起きてもいいように、
こうして普段からドレスの下に身につけていますわ!
レストレード
レストレード
は、はあ・・・
メアリー
メアリー
やっと探偵らしい事件に巡り会えたわ。
アラン
アラン
オメデウございマス、お嬢様サマ。
メアリー
メアリー
ええ!

さっそくハーヴェスト男爵様の周辺を張るわよ!
あと、同時進行であの楽譜の謎も解かなきゃ!

それに・・・
メアリー
メアリー

レストレード
レストレード
喜んでるところ申し訳ないが。

あなたのようなお嬢さんを
事件になるかもしれないような事案に巻き込むわけにはいきません。

私としては了承しかねます。
メアリー
メアリー
でも、奥様はいいって!
レストレード
レストレード
 だとしてもです。
それに、すでに依頼を受けた私の友人の辞書には協力という言葉がありませんので…
メアリー
メアリー
まあ・・・確かに、あの性格じゃ友達とかいなさそうですわね。

先程の221Bの男をメアリーは頭に浮かべた。


性格はさておき、容姿だけならば良い。

スラッと細く高い身の丈に、栗皮色のスーツがとてもよく似合っていたし、
白すぎる肌も少し病的に見えたがそれはそれでセクシーで・・・




メアリー
「(って!何を考えてるの私!)」



メアリーはぶんぶんと頭を振り、
頭に浮かんでいた221Bの住人の姿を消し去る。


メアリー
メアリー
あの方がとても問題有りなのはわかります。

でもそこをなんとか!

警部のお力で…
レストレード
レストレード
無理です。
それに、あいつは俺の言うことを聞くようなやつじゃありません。
メアリー
メアリー
・・・わかりましたわ。

アラン?
アラン
アラン
ハイ



アランはレストレードに1枚の紙を差し出す。



そこには


「ご請求書 乗車代 2£ 」


と書いてある。
アラン
アラン
コチラ、運賃になりマス。
レストレード
レストレード
はあ?!
お金がかかるなんて聞いてない?!
メアリー
メアリー
なんであろうと、お乗りいただいたのは事実。
そうよね?アラン。
アラン
アラン
払う?協力スル?

それとも・・・シヌ?
レストレード
レストレード
メアリー
メアリー
そうそう、アランはうちに来る前、
フランスで有名な格闘家でしたのよ?


アランはボキボキとおもむろに指を鳴らし始める。

アラン
アラン
昔の血が騒グ・・・
レストレード
レストレード
わわわわわわわわかりましたよ!!!


たまらず同意の言葉を吐いたレストレードに、
メアリー
メアリー
交渉成立ですわ。
と、メアリーは満足気に微笑んだ。









つづく

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