エミ夫人を見届けた馬車は、
スコットランドヤードへと進路を変え、
メアリーと、レストレード、そしてアランの3人を乗せて再び走り出す。
外から見れば
その馬車はただ静かに歩を進めているように見えるが、
車内はというと・・・
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「こうしちゃいられないわ!」と言いながら、
身につけている装飾品を
全て外したかと思うと、
彼女は突然ドレスを脱ぎ始めた。
あっという間にドレスがするりと落ち、
レストレードは慌てて両手で目を覆う。
が、しかし、それは結果的にいらぬ行為であった。
なぜなら、彼女はドレスの下に別の衣服を身につけていたからである。
黒い短めのワンピースに真紅のジャケット。
先程の華やかで麗しい淑女のドレスとは正反対の
活発で動きやすそうなものであった。
先程の221Bの男をメアリーは頭に浮かべた。
性格はさておき、容姿だけならば良い。
スラッと細く高い身の丈に、栗皮色のスーツがとてもよく似合っていたし、
白すぎる肌も少し病的に見えたがそれはそれでセクシーで・・・
メアリー
「(って!何を考えてるの私!)」
メアリーはぶんぶんと頭を振り、
頭に浮かんでいた221Bの住人の姿を消し去る。
アランはレストレードに1枚の紙を差し出す。
そこには
「ご請求書 乗車代 2£ 」
と書いてある。
アランはボキボキとおもむろに指を鳴らし始める。
たまらず同意の言葉を吐いたレストレードに、
と、メアリーは満足気に微笑んだ。
つづく
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。