第2話

第2幕 3つの葬送曲 プロローグ2改正
155
2019/09/11 23:45









時は遡ること、
221Bの住人が家を出る数時間前。









AM2:15

















風が轟々とひどい呻き声を上げながら、
雨を窓ガラスに打ち付けている。




そして遠くからは雷のき声が、
少しずつ少しずつ、その恐ろしい光の刃と共にこちらへ迫っていた。







(ゴロゴロ...ゴロゴロ...)






















耳が引きちぎられるような音ともに、
雷光に映し出されたのは一人の男。






彼は自室のピアノの前に腰掛け、
苦しそうに胸を右手で掴みながらもがいている。






そんな彼を見下ろすようにして、
その横に女が一人佇んでいた。










女は特に何をするわけでもなく、
感情の無い目で男を見ている。






時折小さく動く唇は、
なにか言葉を紡いでいるようだったが、
もはや聞き取ることはできない。











そして、
一際大きく窓の外が光った瞬間...















ゴロ...ゴロゴロ...













.
.
.
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光の刃が振り下ろされ、空気が揺れる。

そしてその、つんざくような音に交じって、
女の悲鳴が聞こえたような気がした。












.
.
.
.












ファ
















AM2:40









先程の暗い部屋に男が一人。


女の姿はもうない。




そこへ
突如鳴り響くピアノの音。


雨の音に消えてしまいそうなほど、
その音色は弱々しいが、
ただひたすらに、ある一定のフレーズをリフレインし続けている。














ファ
















.
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.











ファ















.
.
.
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(ジャーーーーン)











まるで断末魔のような、
鍵盤を一遍に打ち付けた不協和音を最後に、
ぴたりと演奏が止まる。










そしてそれが、
音楽家の最後の演奏となった。





















つづく

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