「さ、狭山あなたですッ、よろしくお願いします。ペコ」
少しおどおどして自己紹介をしたのは、俺らの部の新マネージャー、"あなたちゃん"。
背が低くて、少し可愛らしいこの子に、他の奴らはメロメロで。
「ねぇねぇ、誰狙ってるの?」
「え、好きな奴いんの!?」
「彼奴はやめとけよ?」
そう言って指されたのは、俺だった。
でも、その子は顔を真っ赤にしてこう言ったんだ。
「わ、私、涼介先輩、かっこいいと思いますッ…///」
こんな無愛想な俺に対してこんなこと言う子、初めてだった。
「あ、もしかして山田狙ってんの?」
そう聞いたのは、サッカー部のキャプテン、高木さん。面白半分で聞いてる感じがどうも気に食わない。
「ねら、狙って!?いやいや、私みたいなのがそんな!それに、サッカー部には元から入ろうと思ってましたし!」
みんなが、なーんだって思ったのに、
「でも、山田のこと好きなのは否定しないんでしょ?」
またこの人は…
「ま、まぁ…私、中学からのファン、なんですけど…覚えられてないと思うので…えへへ」
「「ちゅ、中学から!?」」
みんなしてハモってんじゃねぇよ笑
「私なんて、覚えてないと思うので...」
「覚えてないわけないじゃんとか言わないの?笑」
まーた煽ってくるこの人はなんなんだ( ˙-˙ )
「覚えてないわけないじゃん?」
「「は?」」
「だから、覚えてんだって」
「え...それって、私の事覚えてるってことですか?」
「ん、そゆこと」
そりゃ、そうでしょ。
だって、俺の初恋の人なんだもん。
「え、いやいや、え、だって話したこともないし、え、?...ブツブツ」
何言ってんのかわかんないけど、めっちゃパニクってるみたい。
「なぁ、大丈夫?笑笑」
「え、あ、はい、大丈夫ですッ!!」
俺の問いかけに、笑顔で答えてくれる。
他の子みたいにキャーキャー言わないで素直に接してくれるこの子に、俺は惚れたんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!