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第7話

🌻
211
2020/08/17 05:55
振り返ると、数メートル向こうの路地。

同じクラスの佐野玲於が、じっとこっちを見つめていた。

いつものように、表情のない目で。

佐野は誰ともつるまない。

男子とも女子とも。

私と違っていじめられてた訳じゃないけど、クラス内の全ての人間と、距離を置いているようだった。

それでも顔は結構カッコよくて背もスラっと高くて、休み時間の度に「好きなAV女優ランキング」とかで盛り上がってる、クラスの他のガキっぽい男子とは違って、中2には思えない、ちょっと大人の魅力があって。

2年生になった当初、同じクラスになれたってはしゃいでる女の子たちもいて、早速話しかけてる肉食系女子もいたけど。

メアド教えてー、赤外線しよー、とまとわりついてくる女の子立ちに向かって、佐野はこう言った。
佐野玲於
俺は生きてる人間には興味がない
佐野玲於
お前らみたいなの、マジでウザイから、さっきと俺の視界から消えてくれ
その一言で、肉食系女子たちは揃って幻滅したらしい。

いくら顔が良くても、性格が最悪じゃ、ね。

………いや、そんなことは今はどうでもいい。

問題は、なんで佐野が私の名前を呼んだのかってこと。

そして今、真っ直ぐこっちを見つめているのかってこと。

どうして、私がここにいるのがわかるの?

私は幽霊の身で、誰にも見えないはずなのに……。

そのままずいぶん長い間…いや、実際にはほんの数秒だったと思うけど…私たちは3mほどの間隔を挟んで、しっかり見つめあっていた。

佐野はしばらくすると、冷えた目のまま、足を返して歩き出した。

後に残され、立ち尽くす私を、何人もの人がすり抜けていく。

しかし、なんだったんだろう、今の。

確かに、言ったよね?佐野。

胡桃って、私の名前、呼んだよね?

私の事、見てたよね?

でもまさか、そんなわけ…。
疑惑を残したまま、私は葬儀場を後にした。

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