第22話

好きにしろ
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2023/11/04 12:50


あの後、辻くんたちにはお礼を言われた。

大したことをしたつもりはこれっぽっちも無いのだが……妙である。

何かお礼をしたいと言われたので、今度ごはんを奢ってくださいと言っておいた。 食欲の春夏秋冬。


ところで皆々様よ。今日は待ちに待った学校に通う日だぞ。


ボーダー推薦で転入が可能な高校は二つあるが、私が通うのは三門市立第一高等学校の方だ。
(六頴館もあったが、進学校ということでやんわりお断りさせて頂いた)


地図を見ながら辿り着いた校舎は至って普通な感じである。 ボーダーと提携しているのだからもっと近未来な風貌なのかと思っていたが……拍子抜けだ。

でも非常時はこの校舎がガンダムみたいな巨大ロボに変形したりして。
やばい、夢がありすぎる。






「てめぇ、何してんだよ」






私が妄想に耽っていると、後ろから声がした。
振り返ればそこには____







『か、影浦さん……!? なぜここに!?』

「生徒として通ってんだから居るのは当たり前だろ。」

『いやでもこの時間って遅刻では……?』







そう問えば、影浦さんはふいっと目を逸らした後「……防衛任務だったんだよ」と呟いた。

うん、絶対嘘だろうな。 でもそれを口にする度胸は私にはない。


とりあえず一緒に校門を潜り校舎に入った。
下駄箱にて、影浦さんは乱暴な手付きで上履きを引っ張り出す。







「てめぇ、今日から転校してきたんか?」

『そうですよ。 影浦さんは何年生ですか?』

「3年。……ってか、その気持ち悪いって呼び方やめろ」

『え、なんて呼べばいいんですか』

「勝手にしろ。」







理不尽だなぁ……。そう思いながらズカズカ進む背中を見つめる。

他の人は何て呼んでるんだろう。 あ、そういえば村上さんは___






『カゲさん、』






途端に彼の足が止まった。

そして鳩が豆鉄砲を喰らったような顔でこちらを振り返ってきた。







『カゲさん、って呼べばいいですか?』

「……好きにしろ」

『あっハイ。 じゃあよろしくね、カゲさん。』







隣に駆け寄ってそう微笑んでみる。

が、無言で顔を逸らされてしまった。何か反応してくれてもいいものを。


まぁ否定されないから悪くは思ってないのだろう。彼の性格から推測するに、これは「良し」の意。なはず。

そう考えながら2人で歩みを再開する。___しかし。







『あっ!』

「んだよ」

『あの、職員室って何処ですか……?』







恐る恐る訊ねる。 すると「ハァーーーッ」と馬鹿でかい溜め息を吐きながら、ズカズカ歩き出してしまった。

そして置いてけぼりになる私を一瞥し、「着いてこい」と大きな口を動かした。







『あ、ありがとうございます! カゲさんって案外優しいですね!』


「……言っとけ」







そんなこと言いつつも耳が赤いカゲさんは、どうやら可愛いところもあるようだ。





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