第21話

あの日
867
2023/11/03 09:00


(辻 side)





鳩原先輩が居なくなったあの日。

もちろん俺たちも悲しかったけど、一番気が滅入っていたのは二宮さんだと思う。


あの人は鳩原先輩を遠征部隊に入れるために誰よりも尽くしていたから。
それなのに当の鳩原先輩が消えて、たぶん感情の整理が全然つかなかったと思う。


だから少なくとも俺たちは、二宮さんに負担を与えないようにしようって話した。

鳩原先輩の一件はあくまでも“起こってしまったこと”という感じで、明るく軽く処理する。 
重い雰囲気には絶対しない。

あの人のためにそれを徹底してきた。今までもずっと。


___だからなのかな。


俺たちはこれまで、鳩原先輩に対する本音をぶつけ合うことが殆ど出来なかった気がする。 彼女の存在を引き摺ることがタブーだとでも言うように。

いつの日からか、自らの心を縛り続けていた。

でも。






『嫌なら嫌でいいでしょう。 無理に我慢して自分を殺す必要なんて無い。
鳩原さんを大事にしたいって気持ちは、悪いことじゃないと思いますよ。』






あなたさんのその言葉を聞いて、胸が熱くなった。


本当は俺も“起こってしまったこと”なんて軽く扱いたくなかった。 ずっと辛くて苦しかった。

忘れられる日なんて無かった。

そんな感情全てを肯定してもらえた気がした。


あなたさんは凄いなあ。






「本当にありがとうございました」






別れ際、気付けばそう口にしていた。

言われたあなたさんは『自分何かしましたっけ?』というような表情をしていたけれど。
この人のおかげで俺たちは前に進める気がした。


いつになるかわからないけど、今度みんなで鳩原先輩のことを話し合おう。 二宮さんも交えて、腹を割って。


そして全てが終わった後、俺たちが笑えているといいなと思う。





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