第26話

イレギュラーゲート
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2023/11/26 09:00


「その代わりにさ、付き合ってよ。あなた」






その言葉を聞いた瞬間、私の身体の全機能が停止した気がする。

付き合ってよ、付き合ってよ、付き合ってよ……とエコーのように声だけが頭に響き、それ以外の全ての情報が遮断された。


付き合うってもしかしてそういうことですか。
私こう見えてうらわかき乙女なので勘違いしてしまうんですが!? いいんですか出水くん!?


ドッドッと心臓を脈打たせつつ心中でそう呼びかける。
しかし当の出水くんは大したこともないように微笑んで言った。







「いやさぁ、今日同じ隊の唯我が体調不良で休んでて。ここからある防衛任務の人手足りなくなっちゃんたんだよ。 だからあなたに力貸してほしいんだけど。

付き合ってくれる?」







あっ……そういう意味か。そっか、そうだよね……。


若干、というか結構落ち込みつつも『いいよ、手伝うよ』と答えた。
途端に嬉しそうに感謝を伝えてくれる出水くんに悪気は無さそうであった。

つまりそう、勘違いして自惚れた私が悪い。That's all。


ごめんなさい出水くん。私が自意識過剰な女だったせいで、初登場から“チャラ男”のレッテルを貼り付けそうになってしまった。


もはやこの懺悔に関しては防衛任務での働きでしか出来ないだろう。 故に早速学校を発とうとする。

すると、すぐに右足に痛みが走った。







『痛っ…』

「! 大丈夫か?」







うずくまる私に出水くんが駆け寄る。

そのまま彼は私の靴下をそっと下げ、右足を診てくれた。







「……赤くなってるな。なんか心当たりあるか?」

『えっ、わかんな……』







そこまで言いかけ、止まる。


そういえばさっき根岸くんに掴みかかられた時に、右足を机の脚に強く打ち付けた気がする。

まさか……と痛みの走る位置を確認すれば、赤くなっているのは右足の脛。ぶつけた場所と完全一致していた。


そこから私は何とも言えなくて、ひっそりと出水くんを見上げる。 それだけで出水くんは察したらしく「あぁ…あの時か」と額を抑えた。







「悪いな、もうちょい早く助けてやれてれば」


『えっいやいや!滅相もない! 助けてくれただけ有り難いよ!』


「……そか。どういたしまして。 まぁでも手当てはした方がいい。トリオン体になれば痛みはないとはいえ、後引くのはまずいだろ。
少し待ってて。」







そう言って出水くんは誰かに電話をかけ始めた。 その間に私はスマホを覗く。
なんと迅さんから連絡が入っていた。


どうやらここ最近“イレギュラーゲート”が多発しているらしい。

イレギュラーゲートとは、座標誘導が効かず本来出現が予想される警戒区域から離れた、警戒区域外に現れてしまう特殊なゲートのこと。
街や市民が巻き込まれる恐れがあるため大変危険だ。


迅さんからのメールは、「気を付けるんだぞ」という気遣いの言葉で締め括られていた。 優しさが心に染みる。

とりあえず『了解です!』と返事を済ますと、流れるように思考に耽った。


____イレギュラーゲートというのは、大阪でネイバーが現れた事件とも関係しているのだろうか。 あれは警戒区域外というよりもはや三門市外ではあるが…。

何にせよ座標誘導とやらが効いていないのは由々しき事態だ。早く良くなるといいな…と思いつつスマホを閉じる。

そこでちょうど出水さんも電話が終わったらしく、私の目線に合わせ屈み込んできた。







「何見てたの?」


『迅さんから連絡があって…。イレギュラーゲートのこと。』


「あぁほんと?なら説明する手間が省けたわ。 今から俺らがする防衛任務もイレギュラーゲート関連だから。」


『そうなの?』


「おぉ。ひとまずは過去にゲートが出現した付近に張り付いて見回る、って感じ。 手当てが終わって太刀川さんと合流次第始めるから。頼んだわ。」


『わかった。』







テキパキとした説明に首肯する。

そのとき、傍の階段から誰かが降りてくるのが見えた。 
ピンクがかった髪に可愛らしい顔立ちの女の子。


それは先日お好み焼きを食べに行った時にお話した、国近さんだった。




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