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かつての、幸せな私の話。
僕になった、私の話。
歳は変わらないはずなのに、妙に悟っている。
そこに助けられる部分も多い。
手足の強ばりをなんとか隠し通し、無理やり笑う。彼女に心配かけるわけにはいかない。
また、始まるのか。
あの、地獄の時間が。
ため息を飲み込み、足を進めた。
放課後。
なんとかやり過ごし、やっと解放された僕は、
信号待ちをしていた。
と、急に後ろから腕を引かれ、よろけてしまう。振り向くと、怒っている彼女が。
突き放した。いつか彼女が巻き込まれるのだから。
感情を殺せ。彼女を巻き込むな。
ダッと走り出した先に、暴走トラック。
その上、通り魔がいた。
彼女を引き寄せ、刺された後、そのまま彼女を歩道に戻し、自分が引かれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!