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第17話

勝ち気な彼の涙
優木 景久
優木 景久
通学の途中、バイクで事故に遭った。
あの日は確か、雨と風が強くて、視界も悪くて……。
カーブで風にあおられて、スリップしたんだ
笹良 直
笹良 直
交通事故、だったの……?
優木 景久
優木 景久
ああ。
それから記憶がないから……。
命は助かったけど、それから寝たきりなんだろ

思い出せる限りの事情を、景久は語る。


バイクは「何かあると困るから通学に使うな」と、父親に反対されていたらしい。


景久はそれに反発して、自分の貯金で免許をとり、バイクも買って、通学に使っていたそうだ。


その結果事故に遭い、重体となっていつ目を覚ますかも分からない状況にある。


自分の体を目の前に、感情の置き所が分からないのか、景久は淡々と話した。
笹良 直
笹良 直
でも、どうしてその事故のことを、ご両親は伏せてるんだろう?
優木 景久
優木 景久
病院を継ぐはずの息子が、自分の不注意で事故にあったなんて患者に知られたら、親のプライドが許さないんだろ。
最初から反対していたわけだし

私の質問に、景久は乾いた笑いを漏らした。


ここまで徹底して景久の情報が隠されていたのは、景久の両親が、病院の評判を落とさないためにしたものだったのだ。
笹良 直
笹良 直
(うそ……。
いくらなんでもそこまでする?)

愕然とした。


きっと私の何倍も、景久はショックを受けている。
笹良 直
笹良 直
何よりも、目を覚ましてもらいたいって思う方が先なのに……
八森 朝陽
八森 朝陽
そうだね。
僕も、そう思う

私の呟きに、朝陽先輩も同意するように頷いた。
優木 景久
優木 景久
ふたりとも、ありがとな……。
それと、直。
しばらく帰らなくてごめん。
ちょっと、ショックが大きくて……、笑顔で帰る余裕がなかった
笹良 直
笹良 直
いいんだよ。
こんなの、当然ひとりで受け止めきれないよ……

景久が肩を落としているのが苦しくて、今すぐここで抱きしめてあげたいくらいだった。


生き霊となってしまった景久を、元に戻す方法なんて分からないし、景久本人がいつ目を覚ますかも分からない。


ただ今は、景久に寄り添っていたかった。


触れることはできないけれど、そっと彼の背中に手を伸ばす。


言葉では伝えきれない気持ちだけでも、伝わってほしいと思いを込めた。
八森 朝陽
八森 朝陽
……僕は、外で待ってる。
時間は気にせず、ふたりでゆっくり話すといい
笹良 直
笹良 直
ありがとうございます、先輩

朝陽先輩は私たちの気持ちを察して、病室を出て行く。


本当に優しい人だ。


その思いは景久にも伝わったようで、先輩が外から扉を閉めた途端に、涙を零していた。


【第18話へ続く】