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第12話

かわいくなりたい
笹良 直
笹良 直
(景久はああ言ったけど、内緒で実家と大学、行ってみようかな……)

バイト先に向かう道中、私はその気持ちに傾き始めていた。
優木 景久
優木 景久
じゃあ、また時間になったら迎えに来るから。
頑張れよ
笹良 直
笹良 直
うん、ありがとう

本屋の前で景久と別れ、裏口から入っていつも通りの流れで準備する。


頭の中は、どうやって景久に内緒で出かけるかで一杯だった。



***


笹良 直
笹良 直
こちら、ブックカバーをおつけしましょうか?
お客さん
お客さん
お願いします

仕事はいつも通りできていると思うのだけれど、暇ができるとすぐに頭の中が景久のことで一杯になる。
笹良 直
笹良 直
(そういえば、お出掛け用の服を持ってないな……。
あんまり地味だと、ご両親に会えても、本当に景久の知り合いなのかって疑われるかな?)

ぼんやり考えていると、自然とファッション雑誌コーナーに視線が行く。


いつもは自分には縁のない世界のことだと思っていたけれど、こんな時こそ頼ってみたくなる。
笹良 直
笹良 直
(いやいや、そんな余裕はないって!
雑誌も服も、買うお金なんか……。
いつもの服装で充分)

ひとりで首を振っていると、横から実里さんが顔を出した。
相楽 実里
相楽 実里
どうしたの?
さっきからファッション雑誌コーナーをじっと見て……
笹良 直
笹良 直
え!
あっ……ぼーっとしてすみません!
相楽 実里
相楽 実里
今お客さんほとんどいないし、ちょっと休憩しようか。
朝陽も、直ちゃんの元気がないって心配してた
笹良 直
笹良 直
先輩が……?

レジでお客さんの対応をしている朝陽さんを、ちらっと見る。


いつでも私のことを気にしてくれる、本当にいい人だ。


でも、以前ほど恋い焦がれる感じはしなくなった。
相楽 実里
相楽 実里
あー、なるほど……。
そういうことね。
それでついに、直ちゃんもおしゃれに目覚めてきたわけね?

なぜ気付いたのか分からないけれど、実里さんが見事に私の心理を言い当ててきた。
笹良 直
笹良 直
あ、いや。
目覚めたとかいうのではないんですけど、少しは気を遣わないとなって思う出来事があって……。
でも、そんなお金の余裕ないし、いいんです
相楽 実里
相楽 実里
なんだ、そういうことなら私に任せなさい!
ほら、休憩がてら事務所に行って話を聞こうじゃないか
笹良 直
笹良 直
えっ? えっ?

嬉しそうに張り切る実里さんに、半ば強引に背中を押されるかたちで、私は「少し遠くまで、おしゃれして出掛けたい」という事情を話すことになった。



***



それから丸一日経った、翌日の休憩時間。


実里さんは、いそいそと大きな紙袋を持って私のところへやってきた。
相楽 実里
相楽 実里
はい、これ直ちゃんにあげる
笹良 直
笹良 直
えっ、こんなにたくさん!?
そんな、申し訳ないです……!
受け取れないです
相楽 実里
相楽 実里
昨日、任せなさいって言ったじゃん。
これ、全部使わないし、余ってるやつなんだ

袋の中には、『着てみたら自分には合わなかった』という服や、新品のまま余らせていたコスメグッズや香水がいくつも入っている。
相楽 実里
相楽 実里
直ちゃんの雰囲気に合いそうなものを選んでみたからさ。
家にあってもどうしようもないし、よかったら使ってよ
笹良 直
笹良 直
……だったら、ぜひ使わせてもらいます。
ありがとうございます!
相楽 実里
相楽 実里
うんうん。
それ使って、直ちゃんが自信をつけてくれたら嬉しいから
笹良 直
笹良 直
え?
それってどういう……
八森 朝陽
八森 朝陽
相楽さん。
いつものお客さんが、聞きたいことがあるって来てるんですけど……

実里さんを呼びに事務所に入ってきたのは、朝陽先輩だ。
相楽 実里
相楽 実里
あっ、はーい行きます!
……朝陽も、頑張るんだよ!
八森 朝陽
八森 朝陽
いてっ!
え、何をですか……?

すれ違いざまに、実里さんは朝陽先輩の背中を小突く。


私も朝陽先輩も、訳が分からずきょとんとしていた。



***


夜は、約束通り景久に迎えに来てもらい、アパートへと戻る。


景久が紙袋の中身を気にしていたけれど、私は敢えて秘密にした。
笹良 直
笹良 直
ちょっと着替えたいから、下に行っててくれない?
優木 景久
優木 景久
分かった

景久が居なくなったことを確認して、実里さんにもらった服やコスメ、香水を試してみる。
笹良 直
笹良 直
わ、このワンピースいいな……。
リップはオレンジが合うのかな。
ピンクは浮いちゃう気がする……

自宅でひとりファッションショーなんて、人生で初めてのことだ。


こんなにもわくわくするものだとは思わなかった。
笹良 直
笹良 直
香水はひざの裏かくるぶしにつけると、ふんわり匂うからいいよって言われたけど……。
ちゃんとついてるのかよく分からないな
優木 景久
優木 景久
直ー。
もうそっち行って大丈夫?
笹良 直
笹良 直
いいよ。
ちょうど聞きたいことあるし

香水で苦戦しているところへ、景久が戻ってきた。


私を見るなり、ぴたっと動きを止める。
優木 景久
優木 景久
なに?
かわいいじゃん。
誰かとデート?

彼の驚き顔が、とても嬉しい。
優木 景久
優木 景久
オレンジ色のリップ、似合うな。
派手じゃなくて。
直らしいっていうか
笹良 直
笹良 直
あ、ありがとう……。
残念ながら、デートじゃないんだけど

景久に褒められると、なんだかドキドキして、自分でも不思議だった。



【第13話へ続く】