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第14話

私にできること
笹良 直
笹良 直
今度、優木医院に行ってみようと思います。
景久はそこで何かを知ったから、帰ってこないんだと思うので……

朝陽先輩と薄暗い道を歩きながら、私はそう言った。


先輩は一度頷いたものの、じっと地面を見つめて立ち止まる。
笹良 直
笹良 直
先輩?
八森 朝陽
八森 朝陽
ちょっと、幽霊相手に入れ込みすぎじゃないかな。
分かっていると思うけど、彼は人間じゃないんだよ
笹良 直
笹良 直
……!

先輩の言葉が、胸にグサリと刺さる。


同時に、はっとした。


間違いなく、景久は幽霊で、私とずっと同じ時間を過ごせるわけではない。


景久があまりにも幽霊っぽくなくて人間味があるので、忘れそうになってしまう。
八森 朝陽
八森 朝陽
助けてあげたいって頑張るところは笹良さんらしいけれど、僕たちと彼らは、言葉通り〝住む世界が違う〟んだよ?
あまり干渉しないのも、優しさじゃないかな
笹良 直
笹良 直
……はい

納得はしているし、頷きもした。


ただ、その一方で、心の中はすっきりしない。


せめて、景久が成仏できるような手助けをしたかった。


でも、彼がいなくなった今の状況も、寂しいのだ。


いつか離れる時がきても、「会いたい」と思ってしまうのだろう。
笹良 直
笹良 直
…………
八森 朝陽
八森 朝陽
ああ、笹良さんを責めたかったわけじゃないんだ。
ごめんね。
ただ、心配で……
笹良 直
笹良 直
……はい。
分かってます。
ありがとうございます

しょぼんとする私を前に、朝陽先輩が優しくフォローしてくれる。


でも、今私が言葉を交わしたいのは、景久だった。


姿を見て、安心したいと思っていた。



***



複雑な気持ちを抱えたまま、仕事の時間は進んでいく。
笹良 直
笹良 直
あの、何かお探しでしたら、お手伝いしましょうか……?

私は普段よりもぼーっとしてしまい、うっかり、幽霊の女性客に話しかけてしまった。
幽霊のお客さん
幽霊のお客さん
まあ!
あなた、私が見えるの?
嬉しい……初めてそんな人に会えた!
笹良 直
笹良 直
……はい

今まで関わることを避けてきたけれど、ここまで喜ばれるとは思わず、私も驚いた。
幽霊のお客さん
幽霊のお客さん
この、【銀河鉄道の夜】という本をもう一度読めたらそれでいいの……。
私は本に触れないから、冒頭だけでも。
お願い
笹良 直
笹良 直
ああ、宮沢賢治の……。
かしこまりました

私は言われた通りに本を手に取り、開いて見せた。


彼女は満足したようで、感嘆の溜め息をもらし、その場ですうっと消えて成仏していった。
相楽 実里
相楽 実里
直ちゃん……?
だ、誰と話してるの?
えっ、何!?

背後から、実里さんの震える声が聞こえた。


一部始終、見られていたらしい。
笹良 直
笹良 直
あっ!
こ、これはですね……
八森 朝陽
八森 朝陽
さ、笹良さんは接客の練習をしていただけですよ

あたふたとする私を、朝陽先輩が咄嗟にフォローしてくれた。


私もありがたくそれに乗っからせてもらう。
笹良 直
笹良 直
そ、そうです!
接客、もっと上手くなりたいなあって思って……
相楽 実里
相楽 実里
練習!?
超リアルだったよ……?
ってか、それくらいできるなら、もう練習必要なくない?
笹良 直
笹良 直
あはは……

先輩のおかげでなんとか誤魔化すことができて、私はジェスチャーで感謝を伝えた。


それから、女性がいなくなった場所を見つめてしばらく呆然としていたけれど。


私にもこうしてできることがあるなら、景久のためにやはり優木医院に行ってみようと決めた。



【第15話へ続く】