>> 凛華 side___
私の胸ポケットの感触が , 物が 入っていないことを告げてくる。
そうだ。 机の上に置いたまま , 自分のポケットに入れるのを 忘れてきたのだ。
靴を履き替える時までは , 覚えていたのに。
嗚呼 , 数十分前の 私をぶん殴ってやりたい。
何百もの 生徒達が 生徒手帳を開いているのに 私だけ見ていないのは 確実に 浮く___ 。
どうしよう , モブ生徒Bを 目指していく筈だったのに , 登校初日から 私の 学校生活の生死に関わる事態だ 。
何時もだったら 夏輝に見せてもらって居たが , 今回その 夏輝は 遠い向こうの方の列にいる。
絶体絶命 大ピンチだ ___ そう思った時 , 隣から ついついっと 服を 引っ張られた気がした。
隣を振り向けば そこに見えたのは 悪戯っぽく笑う 蓮翔くんの笑顔だった。
彼は 生徒手帳を 開きながら 少し私のほうへ寄ってきた。
と口をパクパクさせながら にししっと笑う彼に 否応無くキュンとしてしまった。いや、だって可愛いじゃないか。
彼は少し 楽しそうに 生徒手帳片手に 此方に 近寄ってきた。
私も 蓮翔くんと同じように口を パクパクさせて 笑って返す。
そして 少し 彼の方に近付いて 生徒手帳を覗き込む。
生徒の人数の割に 狭い体育館。
人と人との距離は 広くは無いから , 私達が 別に目立ってはいないけれど, 何故か ドキドキしている。
すぐ隣に見える 蓮翔くんの顔が迚 綺麗だ。
整った顔立ち…とでも言うのだろうか。すらっと高い 鼻 ,綺麗な 瑠璃色の目。
こんな近くで見たこと無かったから ,凄い顔の細部まで 目に映る。
彼にも 私がこんな風に見えているのかな , なんて思うと 顔を背けたくなる。
あれ。
そんな事考えてたら 終わってしまった。
何の話してたんだ … ?? と苦笑すると , 蓮翔くんは 私の方を きょとんとした顔で見た後 , 笑窪を作って クシュッと笑った。
いや , 可愛い。下手したらきっとそこら辺の女子より可愛いと思う。
いやいや , 絶対可愛いだろう。
何だこのゆるキャラは … と頭の中で 可愛いが渋滞している 。
という 堅苦しい御挨拶の後 , ぞろぞろと体育館を出ていく時 夏輝の顔が見えた。夏輝の隣には , さっき見たような女の子が立っていた…… 気がする。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!