>>波月side__。
11時45分。
約束の時間は 12時だけれど, 少し早く着いてしまった。
正門には 綺麗な桜が 私を見ろ, と言わんばかりに 咲き誇っている。
この木は 学校1 大きな桜の木で, 一般の方々が この木を見に来る程, 立派なものなのだ。
そんな 美しい木の下, 友達を待つ 私は 少し 上着の袖を握る。
まだ春が始まったばかりだから , 北から吹く風邪は 少し冷たい。自転車を漕いでくる時は少し手が悴む程だった。
北風に靡いて 桜の花弁が ちらちらと そこら中に 降り注いでくる。
此方に飛んできた 花弁を 掴もうと手を伸ばしてみたが、 風に煽られ 逃げられてしまった。
小声でボソリと呟き , スマホを 見る。
11時 50分。
人を待っている時間ほど長く感じるものは無いな… と思っていた時 , 誰かに名前を呼ばれた。
驚いて 右を 向くと、 あのいつもの 明るくて 元気な笑顔を浮かべながら 自転車に乗って 意気揚々と 走ってくる 夏輝の顔が見えた。
櫻岐 夏輝。
お淑やかそうな 顔付きに 長い髪。 身長も すらりと高く モデル体型な The 美少女。
今日知り合った 凛華ちゃんと 仲がいいらしく ,
と言って 私を 2-C に連れて行ってくれた。
夏輝は 私の前の席で , 宜しくねと 声を掛けると 明るい笑顔で 挨拶を返してくれた。
嫌な人間の匂いはしなかったし, 新しい友達も出来た。夏輝には 感謝してもしきれない 。
そんな彼女との 話は どれだけ話していても退屈しない。
面白い返し方 , 話題の振り方 。どれも相手の事を 考えてくれているようで , 迚 尊敬している。
ニコニコと 中身の無い雑談をしながら 残りの2人を待っていると , 自転車に 2人乗り しながら 見えた 姿からは , 私と 夏輝の名前を呼ぶ声が聞こえた。
爽やかな The 男の子な声 。
少し控えめだけれど 楽しそうな女の子の声。
そして女の子の声は 明るく 半笑いで 辺りに 響いた。
自転車を 私たちの前に停め , そう笑う。
嗚呼 青春。
彼の服の裾を持つ 彼女の笑顔が眩しい。
何処か 胸の奥の奥が ちくりと痛んだ 気がした___ 。
丁度 時計は , 12時を回った。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。