>>>凛華side___。
何か 蓮翔くんが言いかけた気がした。
とても真面目な顔をして。
どうしたの?と ,返そうとしたが 教室のドアが開き、担任の先生が入ってきた。
次は総合だし, きっと委員会決めだから 喋っていても良かったのだけれど、彼がその先 , その何秒か後を 飲み込んでしまったように見えた。
何か、きっと次の話題に繋がる たわいもない話題だったのだろうか。
なら、また次の授業後にでも聞こう,と気になる自分の気持ちに踏ん切りをつけ, 読んでいた小説を片づける。
まだ読み始めて間もない この小説。
綉弥に借りたのは 春休み前の事だったが, 彼は 私に貸したことを忘れているのだろうか。
この本には, 彼がこの本を貸すのと同時に お土産にくれた栞が挟まっている。
可愛い鹿と 五重の塔の金色の栞だ。
最近はあまり連絡を取っていない。
あっちもあっちで部活やらなんやらで忙しかったらしく、習い事に忙しなく出かけていく姿を よく家の窓から見掛けていた。
また何処か出掛けたいな… と考えていると、やけに甲高い声で 私達の級長の女の子が 委員会決めを始めた。
そういえば、夏輝と委員会の話しなかったな… と後悔しつつ、私は考える。
夏輝と同じ委員会になるには__ 。
と、思ったのも束の間, 私はある結論に辿り着く。
夏輝は 級長やるだろうな___
と言う、私には到底縁のない 結論に辿り着いてしまった。
ならば、もう私の趣味系統の委員会に走ろう… と思い , その名前が呼ばれるのを待った。
目立ちたくはないし ,成る可く人の少なさそうな……
我ながら大きな声で , 手を挙げてみた。
スルーされたら ちょっと悲しいな, なんて思っていたけれど , 普通に認知してくれて嬉しかった。
図書委員の振り分けは 女子1 男子1の2人ペアだから , 少し不安だったけれど,その不安は 私の隣の席に座る 彼が取った次の行動で,打ち消され、安心に変わった。
誰も他に手を挙げなかった。
誰かあげたら譲ろうかと思っていたけれど , 今相手が喋れる仲良しの男の子の状況なら、 余り譲りたくないな __ と思いながら , 級長さんの次の言葉を待った。
その言葉を聞いて、止めていた息を思いっきり吐き出す様な溜息をついた。
何処か肩の荷が降りたような…気が抜けた私は同じ図書委員 の 蓮翔くんに声を掛けた。
図書委員会。
なにか頑張ることなんてあったかな。なんて思いながら 彼に微笑みを投げると 彼は少し キョトンとした顔になって ,
何時ものあの明るくて 可愛い笑みを 私に投げ返してきた。
何時もなら, 可愛い, そう思う筈なのに 何処か 奴の顔が チラつく。
あの 幼馴染の…… 。
綉弥の顔が。
ボソリと窓の外を 飛び去る蝶に向けて発した言葉は , 何処までも広がる青空に 吸い込まれていった_______
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。