>>綉弥side__
桜を見上げながら、凛花がボソリと声を上げる。
そんな様子を少し下がった位置から眺める俺。
キラキラと目を輝かせる凛花が、いつもより遠く感じた。
何故か。理由は至って簡単だった。
凛花の隣に彼奴が立っているから。
幸せそうな凛花と蓮斗の顔を見ていると、どうしても自分の考えていることが邪念だと感じてしまう。
きっと、凛花は蓮斗の事が好きで、蓮斗は凛花の事が好きなのだろう。
……分かってはいても、諦めきれない自分に溜め息が出る。
少し大きく出た溜息に自らびっくりしていると、隣を歩いていた夏輝が呆れたように笑う。
そんなぼやけた返事しかしない俺を見て不思議に思ったのか、叶波と和翔が声を掛けてきた。
少し笑って答えると 前を歩いていた波月が後ろに下がってきた。
そして、少し楽しそうな顔でこう呟いた。
叶波が｢それな~ ???w｣とか何とかケラケラと返し、和翔はその隣で苦笑いしていた。
普段の俺なら、ケラケラと笑い流していたのだろうが、何処か引っかかるような感覚を覚えながら ｢どうだろうな 、｣と言葉を返した。
…そうか、お似合いに見えるのか。
そう思った瞬間,前を歩く2人の方を向けなくなってしまった。
何故か 怖かったのだ。何か、何かを失う気がして。
その時、夏輝から声がかかった。
この時、初めて夏輝の言う言葉の意味が分かった。
慰めてくれていたんだ。
落ち込んでいた俺の事を。
不意に、感謝の言葉が口をついて出た。
｢きっと凛花もね｣、とにししっと笑った彼女の顔が、いつもより眩しく見えた。
なるようになる__そう思い、顔を上げた。
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