>>凛華 side__
『 靴履き替えろ ~ 。』という 新しい担任 , 松寺 鷹江先生の声が 教室に響く。
この学校は 土足OUTな学校だから , いつもスリッパなんだけれど , 体育館に入る時だけは 体育館シューズに履き替える。
ゴミを持ち込まない為 … だったっけ。
面倒だな … だなんて思いながら リュックを漁り , 体育館シューズに履き替える。
廊下は思ったより 静かで , 少し吃驚した。
高一の頃は 廊下に出ては小声でお喋り, が付き物だったから 違和感を感じている。
皆神妙な面持ちで突っ立ってる。
これから始まる ただの始業式 。
校長先生の長ったらしいお話を聞いて , 各学年代表の子の スピーチ聞いて ,生徒手帳に書いてある 学校での 生活ルールをもう一度確認して , 終わりだ。
代表の子のスピーチは 共感できるところもあって楽しけれど , 何より窮屈なのは そう , 校長先生のお話だ。
折り目正しい 時候の挨拶から始まり , 私達の 春休みの過ごし方について問いかけ ,
校長先生 が春休みに旅行に行って 面白かった事 の自慢話を聞かされ ,
何処かの 偉人の名言を取り上げ 同意を示し ……
私の隣にいる 蓮翔くんは 最初からサラサラ聞く気を示さず 今も眠たそうに 首をこっくりこっくり している。
窓から差し込む 春の優しい光が 彼を優しく照らしている。ふわふわとした 柔らかそうな髪の毛。
彼が欠伸をしているのを見ていたとこ,ふと , 目が合った。
人差し指を 自分の唇に当て微笑み , ニコッと笑って 首を 横に傾ける。
その笑顔は 太陽みたいに眩しくて , かっこよかった。
私は そんな彼に 微笑み , 小さい欠伸を 返した。
やっと 校長先生のつまらないお話が 終わり , 次は学年 代表の子のスピーチだ。
1年生の子は 椙麗 幻香ちゃん っていう子の スピーチだった。
内容は 部活を頑張るって言うのと , 将来の夢の話だったかな。
凄く 文が考え込まれていて、 先輩ながら感動したな。
次は2年生。
そういえば 代表って …… ?
コツコツと 軽やかな 足音を立てながら
体育館のステージへと 登っていく 桃瀬 波月と呼ばれた その少女は , サラサラと長いストレート髪を 揺らし , 確りと 礼をする。
何だか 一つ一つの動作が 綺麗で こっち迄 背筋が伸びる。
そして その少女は はっきり とした口調で 喋り始めた。
わ 。B組って 確か 夏輝の クラスだったな , と考えながら 彼女の話を聞いている。
有り余る 語彙 , 分かりやすい 表現 , 文章。
何もかもが完璧だ。
驚いて 先程の眠気は何処かへ飛んで行ってしまい , 思わず 相手の スピーチに聞き入ってしまった。
ペコッと もう一度頭を下げた彼女には 盛大な 拍手が送られた。勿論私も 拍手を送った。
友達と話す話題さえ持ち合わせず、ごちゃごちゃとした 雑談しかできない 私にとって彼女の 話の纏まった , 表現力に満ち溢れた 作文は とても真似出来ないほど 素晴らしかったのだ。
そんな事を考えていたからか、 次の3年生の先輩の話は 覚えていない。
ごめんなさい。 (笑)
あ、鷹江先生って生徒指導の先生なんだ 。
と , 今更ながらの事実に驚きながら,胸ポケットを漁り , 生徒手帳を出す ……という動作をしたのだが , どうにも手にものを掴んだ 感覚がない。
私は どうやら , 本当に馬鹿な様だ。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!