第20話

真相
1,096
2021/10/15 01:00
呪霊の姿に呆気に取られていた悠仁だが、我に返り愛莉の元に駆け寄った。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛、大丈夫か!?
腰を抜かしていた愛莉の後ろには恵が放心状態になっていたのに気づいたが、悠仁は愛莉の腕を掴み立ち上がらせた。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛がこれ·····やったのか?
茅 愛莉
え·····あ、う·····んー·····。
曖昧な愛莉の返事に恵は愛莉に視線を移した。

屠坐魔は使っていない。残穢も残っていない。
じゃあ、どうやって·····。
·····なにで祓った!?

あの呪霊の濃度の濃さを考えると低級じゃない。
2級の中の上。
彼女が祓えるレベルじゃない。

しかも、祓った·····のか?形が残っている。屠坐魔で祓ったとしても、姿形消えるはずなのに


なぜ、まだ残っている·····?
呪力のないもので倒したから·····?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
伏黒!!
悠仁の声にハッとさせられ、顔を上げた。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
どうした?大丈夫か?
今、ここで考えててもキリがない。
これは隠すも何も、五条先生に報告しないといけなくなった。
伏黒恵
伏黒恵
·····大丈夫だ。
五条悟
五条悟
大丈夫~?
コンビニの入口に悟と野薔薇が立っていた。
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
愛莉大丈夫?
茅 愛莉
私は全然。伏黒君が後ろにまで飛ばされちゃって·····。
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
虎杖も飛ばされてきたからビックリしたけど、結局なんだったのよ。
五条悟
五条悟
悠仁と愛莉は外で休んでな。野薔薇、愛莉を連れて行ってあげて。
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
分かったわ。
恵以外がコンビニ跡から出ていくと、悟は恵の前に立った。
五条悟
五条悟
うひょー。凄いねー。誰がやったのかな?
恵?悠仁?·····それとも
ピクリとも動かない呪霊のところに足を進め、顔を近づけて観察をする悟は
五条悟
五条悟
愛莉?
後ろを振り返ると恵が何とも言えない表情で悟を見ていた。
五条悟
五条悟
見たの?祓ったところ。
伏黒恵
伏黒恵
俺も吹き飛ばされて、起き上がった時にはもう·····。
五条悟
五条悟
短時間でここまでってなると、相当な呪力も使うし、屠坐魔だけなら尚更仕留めるのに時間かかるけど
伏黒恵
伏黒恵
屠坐魔は使ってないです。
五条悟
五条悟
そうだろうね、屠坐魔の呪力を一切感じないよ。残穢も何も。
伏黒恵
伏黒恵
俺と虎杖が居ないあの短い時間でアレを倒すなんて無理です。·····ましてや、この呪霊低級じゃないですよね?
五条悟
五条悟
2級だよ。1級にちょっと近い。
伏黒恵
伏黒恵
五条先生、知ってたんですか?
まさか·····このために····
五条悟
五条悟
居るのは知ってたよ。でも、何かあると確証があったから、実験させてもらった。
イラッとした恵は悟を睨んだ。
五条悟
五条悟
ホントに恵は何もしないで、愛莉の様子を監視してもらうつもりだったんだよ。病み上がりなのにやらせるほど僕も鬼じゃないよ。
伏黒恵
伏黒恵
愛莉ちゃんがもし力がなかったらどうしてたんですか。皆死んでましたよ!?
五条悟
五条悟
大丈夫。それだけの確証はあったから。
絶対愛莉の中の❝何か❞が動くのは分かってたから。
悟は呪霊の残骸をじっくり見ると、
五条悟
五条悟
この状態だと棘の術式に似てるな。
伏黒恵
伏黒恵
確かに、狗巻先輩だったらあの短時間でこうなるのは有り得ますけど·····でも、声は聞こえませんでしたよ。
五条悟
五条悟
恵は?
どう思った?
吹き飛ばされた勢いで全く周りの空気や状況に追いつかなかった。呪力を感じ取れば、彼女が術式を使ったのだろう、と分かるのだが。
伏黒恵
伏黒恵
正直、何とも言えないです。
実際の目で見てないので、俺も虎杖も居なかったし、自発的にあーなったのか·····
五条悟
五条悟
愛莉がやったか。
伏黒恵
伏黒恵
·····五条先生の言う、何かの力は当たりだと思います。
信じたくはないが。
五条悟
五条悟
じゃあ、どうやって彼女の中の❝何か❞の正体を引き出すか。
伏黒恵
伏黒恵
またこういう事で試すの止めてくださいよ!
中を見渡し、何もない事を確認するとコンビニ跡を後にした。
五条悟
五条悟
直接本人に聞くしかないよね。その時は。


廃れた駐車場のところで悠仁達は悟と恵が出て来たのを見ると駆け寄った。

茅 愛莉
伏黒君、大丈夫?
病み上がりなのに私のサポートに付き合ったせいで、ごめんなさい。
彼女に何かの力があったとして、それは喜ばしい事なんじゃないのか。
高専に居れる理由になる。

でも、もしそれが良くない力だとしたら·····。

茅 愛莉
伏黒·····君?
伏黒恵
伏黒恵
あ·····大丈夫だよ。
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
結局、なんだったの?
五条悟
五条悟
呪霊が出て来たのを愛莉がちゃんと祓ったんだよ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛が倒したんだよな。
茅 愛莉
え·····いや·····。
私もよく分かんなくて、気づいたら·····。
愛莉は悟に屠坐魔を返した。
伏黒恵
伏黒恵
·····。
五条悟
五条悟
(無自覚か·····。)
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
虎杖が吹き飛ぶぐらいの呪霊を?
五条悟
五条悟
恵も加勢したからね。
一人じゃ大変だろうから。
茅 愛莉
·····。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
そっか、やっぱ伏黒すげぇな。
伏黒恵
伏黒恵
·····。
五条悟
五条悟
さ!これから銀座で寿司だよ!
歓迎会するよー!
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
やったー!ザギンでシースー!
虎杖悠仁
虎杖悠仁
えー、俺ビフテキがよかったー。
茅 愛莉
·····。
なんだろ·····。
何であの時私の目の前の呪霊が吹き飛んだの?


何が起こったのか分からない。
一番分からないのは、何で五条先生はウソをついたの·····。

伏黒君は居なかった。加勢なんてしていない。
どうして伏黒君も何も言わなかったんだろ。


私が何かをしたから、あの呪霊が吹き飛んだ。



私·····何かがおかしい·····?



伏黒恵
伏黒恵
愛莉ちゃんは寿司でホントに良かった?
茅 愛莉
え·····。
伏黒恵
伏黒恵
五条先生に強引に決めさせられてたから。
茅 愛莉
あ·····うん。私は何でも·····。


目の前の呪霊を前に私は死に直面した。その後いきなりその呪霊は私の目の前から居なくなった。




あれ·····。
あの光景前にもどこかで·····。

·····どこだっけ?

伏黒恵
伏黒恵
·····。
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
愛莉、大丈夫?顔色悪いわよ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
歓迎会、今度にするか?
五条悟
五条悟
·····。
茅 愛莉
·····だ、大丈夫!
ちょっと疲れただけだから。疲れたからお腹空いたー。
我ながら棒読みのセリフ。
でも、お腹空いたのは間違いじゃない。
五条悟
五条悟
それじゃあ、行こうか!
悠仁、野薔薇
「「イエーーイ!!」」
ハイテンションの2人とは別に恵はため息をつきつつ2人の後ろを歩き、愛莉は悟の後からついて行った。
五条悟
五条悟
今は、君が祓っておいた事にしとこう。
小さい声で話しかけられ愛莉は顔を上げた。
五条悟
五条悟
愛莉は力を持ってるかもしれないよ。
茅 愛莉
私が·····ですか?
五条悟
五条悟
何の力かはまだ分からないけど
前に居る3人に聞こえない声で、
五条悟
五条悟
高専に居る理由が分からなかったんでしょ?これで居る理由になるんじゃない?
茅 愛莉
私に力があれば·····。
五条悟
五条悟
自信無くさなくて済むじゃん?
茅 愛莉
·····はい。
少し安堵したのか微笑んだ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
先生、銀座までどうやって行くの?
五条悟
五条悟
伊地知の運転する車だよー。
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
シースー!シースー!!
虎杖悠仁
虎杖悠仁
すーし!すーし!!
悠仁と野薔薇が恵を捕まえて、テンション高く伊地知が居る車まで歩いて行った。


茅 愛莉
私に·····力·····。
高専に居られる理由になれる。
悠仁と一緒に居られる。







はずだったのに·····。







五条悟
五条悟
愛莉ちょっといいかな?
数日後、4人で歩いている所を悟に引き止められた。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
何かあったの?
五条悟
五条悟
学長と面談だよ。悠仁もやったでしょ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
え、あの呪骸と戦うの!?愛には無理でしょ!
五条悟
五条悟
話するだけだよ。
茅 愛莉
なんの話ですか?
学長と面談なのに、じゅ·····じゅがい?と戦うって·····。
五条悟
五条悟
大丈夫、大丈夫。
さ、行こうか。
茅 愛莉
は····はい。
心配そうな顔していた悠仁だったが、恵と野薔薇に引き連れられて悟達から離れた。
五条悟
五条悟
愛莉はさ
学長の居る所まで歩いていた悟と愛莉だったが、悠仁達が見えなくなったのを確認すると悟はその場に立ち止まった。学長の所までまだ距離があるため、愛莉は不思議そうな顔で悟を見上げ立ち止まる。
五条悟
五条悟
人を殺した事ある?
茅 愛莉
え·····?
何を·····言ってるの·····?
渡り廊下にいるため、外からの風が2人に吹いて愛莉の髪が顔を隠した。
茅 愛莉
先生·····何を言ってるんですか?
あるわけないじゃないですか!
いきなり物騒な事を言う悟に無礼な事を言うのはよくあるが、今回は言っていい事と悪い事がある。
五条悟
五条悟
君のご両親。
何で亡くなったか、覚えてる?
茅 愛莉
それは·····。
何でぶり返すの?
覚えてないって言ったのに·····。
五条悟
五条悟
君のご両親、電車に撥ねられて亡くなったみたいなんだ。
電車·····。



····電··········車·····?




「お母さん、どこ行くの·····?」


茅 愛莉
子供の声に愛莉は後ろを振り返った。
五条悟
五条悟
!?
まただ·····。


また子供の声·····。

「·····お母さん?」


「とても良いところ。今から良いところに行くの。」



良いところ·····?


声と共にどこかの場所·····。


大人の手を繋いだ子供の手·····。


誰の·····?


ここは·····。
顔を上げたら·····


·····電車のホーム。
茅 愛莉
あ·····。
「愛莉も父さん達と行こうか。」

茅 愛莉
あ·····ぁ·····。
頭を抱えだした愛莉に悟は眉をひそめた。
五条悟
五条悟
(思い出した·····のか·····)
やだ·····どこ行くの·····?

お母さん!お父さん!
行きたくない!!


記憶の断片が少しずつ頭に流れてくる。


今まで思い出さなかったのに·····。
電車が近づく音が聞こえる。



やだ!

いやだっ!!


そっちに行ったら·····


行ったら·····?


茅 愛莉
死ぬ·····。
·····死ぬ·····。
死ぬ!死ぬ!死ぬっ!!!



死·····しかない。


「本当に、あなたは言うこと聞かないんだから。なにをやってもダメ。」

「母さん、そう言うな。愛莉は父さん達のために頑張ったんだよな?」

「だからお仕置してあげたでしょ?良い子にしなさいって。」


家に居たくなかった。
だって幼稚園だと友達も居るし、叩かれる事もない。
笑ってれば、皆笑顔で居てくれた。

お母さん達の迎えが遅かった日も帰りたくなかった。嬉しかった。悠仁君も一緒におじいちゃんと待ってくれたけど、このまま幼稚園に住みたかった。

なのに、他人には良い顔するお母さんが迎えに来ると地獄だった。
大好きな悠仁君も帰って、明日にならなきゃ会えない。




でも、お母さん達とは一緒に死にたくない·····ッ!!








━━━━━━━·····死にたく·····ないっ!!!



瞳が赤くなり、2人を睨む。
子供の異常に気づき、2人は目を見開く。

⟬ ⟬ オマエは今までよく一人で耐えたな ⟭ ⟭
━━━━誰·····?

⟬ ⟬ もう二度と苦しい思いをさせないよう約束しよう ⟭ ⟭
━━━━どこから声が·····。


⟬ ⟬ こやつらはオマエにとって、害に値するな ⟭ ⟭ ⟭
━━━━頭の中·····?


⟬ ⟬ 道連れとは洒落た事をするものだ ⟭ ⟭


「あなた、誰!?!愛莉じゃないわね!!」


⟬ ⟬ 生きる価値のない者か····· ⟭ ⟭



⟬ ⟬ 逝くなら逝けばよいだろう ⟭ ⟭
━━━━え·····。


怯えた目をした2人に、








⟬ ⟬ オマエらだけだがな ⟭ ⟭



電車の音が近づき、


⟬ ⟬ フッ飛べ ⟭ ⟭
━━━━━あ·····。

「え·····」



2人の体は風に押されるように線路に飛ぶ。
その直後、スピードを落とす間もなく電車が2人の体を撥ね飛ばした。



茅 愛莉
あぁあ︎︎"︎︎ァァァ·····ッ!!!
五条悟
五条悟
!!
頭を抱えたまましゃがみ込んだ愛莉に悟はスマホを取り出し電話をかけだした。
姿が見えていなかった悠仁達だが、愛莉の叫び声に驚いて顔を出し、愛莉の様子に異変を感じ駆け寄った。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛莉!!
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
愛莉?ちょっと、先生どうしたのよ!?
伏黒恵
伏黒恵
·····。
2人の体が目の前でバラバラに

少女の瞳は赤から元の色に


そんな瞳には2人の体の血飛沫と共に一部が映る
茅 愛莉
うっ···ぷ··ゴヴエェ···ッ!!
咄嗟的に嘔吐してしまい、悟は背中を擦り繋がった電話の相手に叫んだ。
五条悟
五条悟
硝子、今すぐ来てくれ!!
場所は·····
愛莉の目、耳には悟の声も、悠仁達の姿も見えず、脳内から2人の死んでいった姿がいつまでも離れなかった。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
おい!!愛!!愛莉!!
伏黒恵
伏黒恵
本人に·····話したんですか。
悟は恵の言葉に肯定も否定もしなかった。
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
水を買ってくるわ!!
野薔薇が自販機のある場所まで走って買いに行く。




私が·····。·····私が·····っ。








·····私が·····っ!!




いつまでも

2人の驚愕の表情と

電車に轢かれた後の惨劇の名残が



頭の中を巡っていた·····。





茅 愛莉
あ·····っ···ッ··ぁ·····ハァハァ·····ッ!
瞳から大粒の涙が溢れ、息をするのにも呼吸がしづらい。






私が·····っ!!






━━━━━━·····お母さんとお父さんを·····っ




殺した····━━━━━━━━







愛莉は意識を失い、静かに倒れた。




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