第6話

素質
1,705
2024/03/10 13:11

急に悠仁の中のモノの気配がなくなった。
茅 愛莉
··········。
下からじゃどういう状況なのか分からない。
様子を見るにも悠仁みたいに運動神経がいいわけでも身体能力があるわけでもない。軽々と飛び越えられたらどれだけ助かるだろう。


茅 愛莉
悠仁は·····大丈夫なんだよね·····。
悠仁が自らの首の根をつかみ、そこから半分ずつの二つの気配があった。


しばらくしたら悠仁の気配しかなくなった。



消えた?

出て行った?


幻だった?


違う。確かに、あれは悠仁じゃなかった。

悠仁の中に誰かが
得体の知れない何かが

危険な何かがいた。



今は居ないのか。


じゃあ、これで安心出来る·····?


五条悟
五条悟
着いた、着いたー。
茅 愛莉
急に後ろに現れた目元を隠した男性に愛莉は反射的に振り返った。
茅 愛莉
(気配を感じなかった!いつから居た!?)
五条悟
五条悟
んー。下からじゃ見えないねー。
茅 愛莉
だ·····誰ですか?
突然現れ、敵かも味方も分からない風貌。
目元は黒い布で目隠しをし、全身黒づくめ。


味方だとしても信用出来る格好じゃない。

五条悟
五条悟
ツンツン頭の子居たでしょ。
茅 愛莉
ツン·····ツン頭?
ツンツン頭、と表現し、最近会ったそれらしき髪型の人は一人しかいない。あれをツンツン頭と表現するのかよく分からないが、対象者が一人しか思い浮かばなかった。
茅 愛莉
あ、伏黒·····くん?
五条悟
五条悟
そうそう。
僕はその子の先生。
先生、という感じはしない。
怪しい、という言葉しか見つからないが、味方だと認識し安心した。
茅 愛莉
呪術高専の·····先生。
気を引き締めなきゃという気持ちとは逆に、先生という言葉で安心した気持ちのせいか足元に力が入らなくなり、その場に座り込んだ。
五条悟
五条悟
ありゃ、大丈夫?
悟は立たせてくれようと手を差し伸ばすが、思うように立てない。
五条悟
五条悟
恵は上かな?
茅 愛莉
え·····
いつの間にか愛莉の体は数十センチ宙に浮き、誰かに抱き抱えられ悠仁と恵のいる場所に移動していた。
五条悟
五条悟
今、どういう状況?
伏黒恵
伏黒恵
五条先生!どうしてここに!
五条悟
五条悟
や!
近くに座り込んでいた恵に話しかける。
ゆっくりと降ろされ、抱き抱えた人物を見ると先ほど声をかけてきた目隠しの先生だった。
悟が愛莉を脇に抱き抱え、下から上に瞬時に連れてきていた。
その間、数秒。瞬きする間もなかった。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛·····?
校門入口に居たはずなのに、誰かに連れて来られているこの状況に困惑していた。
茅 愛莉
悠仁·····だよね·····?
見た目も気配も悠仁しか感じない。
でも消えていないわけじゃなかった。


どうして·····?


どこに行ったの?


五条悟
五条悟
来る気なかったんだけどさー。
悟はスマホを取り出し、怪我をした恵の姿を写真撮り始める。
伏黒恵
伏黒恵
(イラッ)
茅 愛莉
あ··血が···。
恵の頭からは血が流れており、血を拭おうとスカートのポケットからハンカチを取り出し恵に近づいた。
茅 愛莉
血が出てる。
伏黒恵
伏黒恵
···だ、大丈夫だから·····
拭こうとするが、恵は拒否し腕で妨げた。
茅 愛莉
でも·····。
女の子からの対応に慣れていない、恵のしどろもどろな表情に悟はニヤニヤしていた。
五条悟
五条悟
さすがに特級呪物が行方不明になると上が五月蝿くてね。観光がてらはせ参じたってわけ。
伏黒恵
伏黒恵
·····。
五条悟
五条悟
で、見つかった?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
あのー·····
その様子にさり気なく手を上げ近づいた。
五条悟
五条悟
ん?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
ごめん、俺·····それ、食べちゃった。
茅 愛莉
え·····
五条悟
五条悟
···············。
食べ·····た·····? 



五条悟
五条悟
マジ?
伏黒恵
伏黒恵
マジ。
気配が消えていなかったのはまだ悠仁の中にあったからだった。
茅 愛莉
なんで·····
悠仁の中にはアレがまだいる。
消えたわけじゃない。



悠仁の中で侵食しているのであれば、もう二度と消えることはない。

茅 愛莉
なんで、食べちゃったの·····?
か細い声に男三人組は愛莉の方に顔を向けた。
顔を俯かせていて、表情が読み取れなかった。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛莉、ごめんな。相談しな
茅 愛莉
·····出て行って。
五条悟
五条悟
·····。
ピリッとした空気を悟一人は感じ取っていた。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛莉·····?
悠仁の気配にもう一人いる。
そんなの許せない。

邪魔だ。
悠仁の命が危ぶまれる。


私は守らなきゃいけない·····っ!


茅 愛莉
悠仁から出て行ってっ!
顔を上げた愛莉は悠仁を鋭く睨みつけた。その一瞬で何かがいきなり悠仁の頬をかすめていく。
がその一瞬で赤くなったのを悟は見過ごさなかった。
伏黒恵
伏黒恵
愛莉の気配に恵も気づき、一歩後ろに下がった。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛莉!なぁ、俺大丈夫だって!ほら、なんともねぇし。
ハッと愛莉は我を取り戻し、周りを見渡した。
茅 愛莉
····あ·····ごめんなさい。
五条悟
五条悟
(へぇ·····面白い。)


愛莉を見て何かを察した悟は悠仁に近づき、顔を覗き込んだ。
五条悟
五条悟
んー?
ははっ。本当だ、混じってるよ。ウケるー。
茅 愛莉
·····。
やっぱり中にいるんだ。
五条悟
五条悟
体に異常は?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
特に·····。
五条悟
五条悟
宿儺と代われるかい?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
スクナ?
五条悟
五条悟
君が喰った呪いだよ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
あぁ、うん。多分できるけど。
五条悟
五条悟
じゃあ、10秒だ。
悟は股関節のストレッチをし始めた。
五条悟
五条悟
10秒経ったら戻っておいで。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
でも·····。
五条悟
五条悟
大丈夫。
僕、最強だから。
茅 愛莉
(なにを、する気なの·····。)
五条悟
五条悟
恵、これ持ってて。
持っていた紙袋を恵に渡した。

愛莉は恵と一緒に中身を覗いた。
伏黒恵
伏黒恵
これは?
五条悟
五条悟
喜久福。
伏黒恵
伏黒恵
·····この人、土産買ってから来やがった!
五条悟
五条悟
土産じゃない。
僕が帰りの新幹線で食べるんだ。
茅 愛莉
愛莉の目の前で宿儺に代わった悠仁が悟を襲おうとしていた。
五条悟
五条悟
えーっと·····君、愛莉ちゃんだっけ?
恵と離れててねー。
伏黒恵
伏黒恵
後ろ!!
クルッと体の向きを変え、宿儺は跪く形になり悟はその宿儺の背中に座り込んだ。

五条悟
五条悟
生徒の前なんでね。
宿儺の顔が愛莉の目の前に迫っていた。


身動きも出来ない愛莉は目を見開き、息も出来ないぐらい目の前の悠仁じゃない、アレを見つめるしか出来なかった。
五条悟
五条悟
カッコつけさせてもらうよ。
両面宿儺
両面宿儺
自らの攻撃を繰り出す前に悟の拳と蹴りが入る。
愛莉は悟に言われた通り、恵の腕を自らの肩に回し、少し離れた場所に移動ししゃがみ込んだ。
殴られた勢いで宿儺は吹っ飛んだ。

だが、手応えもなく、すぐ起き上がった。


悠仁を助けなきゃ·····!
吹っ飛んだ宿儺を睨み、愛莉は立ち上がったがすぐさま恵が腕をつかんだ。
伏黒恵
伏黒恵
ダメだ!
動いたら巻き込まれる!
茅 愛莉
でも·····っ!
両面宿儺
両面宿儺
(おそろしく、速い?違うな。)
ゆっくり立ち上がり、首のコリをほぐすように回した。
両面宿儺
両面宿儺
まったく、いつの時代でもやっかいなものだな。
身体全体に力を入れ、血管が浮かび上がってくる。
両面宿儺
両面宿儺
呪術師は!
悟の前の地面を削り取り、宿儺は攻撃を仕掛けた。
両面宿儺
両面宿儺
だからどうという話でもないが。
砂ぼこりで姿が見えなかったが、中から気配を感じ取った。
五条悟
五条悟
7
風で少しずつ姿を現していた。
五条悟
五条悟
8
両面宿儺
両面宿儺
五条悟
五条悟
9
地面の破片が宙に浮き、悟の前で止まっていた。
悟の後ろには恵を庇った愛莉が身を固くしていた。
五条悟
五条悟
そろそろかな。
両面宿儺
両面宿儺
茅 愛莉
(10秒経った·····。)
両面宿儺
両面宿儺
(クソ!まただ!のっとれない!!この虎杖とかいう小僧·····)
愛莉は恵を庇っていた顔をゆっくり上げ、悠仁を見据えた。
両面宿儺
両面宿儺
(一体、何者だ!?)
虎杖悠仁
虎杖悠仁
おっ、大丈夫だった?
宙に浮いていた破片を落とし、悟は意識が戻った悠仁に近づいた。
五条悟
五条悟
驚いた。
本当に制御できてるよ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
でもちょっとうるせーんだよな。
アイツの声がする。
五条悟
五条悟
それで済んでるのが奇跡だよ。
茅 愛莉
·····。
制御できてるという事は共存してしまっているという事。

もう、元の悠仁は戻ってこない。




ごめんね。




助じぃ、私、悠仁を守れないかもしれない·····。





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