玉犬と共に校内を捜していた恵は所々で呪いを祓っていく。
校内から呪物の気配を濃く感じていた。
角を曲がるとそこには色んな呪いを取り込み大きなモノが居た。佐々木と井口もその中におり、本人達は意識を失っていた。
呪物ごと取り込もうとしていたが、恵からは距離があり取り込む速さが上手だった。
━━━·····短気で 頑固者
悠仁は雨樋のパイプを上手く使い目的の場所まで全速力で駆け上がった。
見舞いなんて
俺と愛しか来やしねぇ
「俺みたいになるな」?
確かにね
でもさ·····━━━━━━
爺ちゃんは正しく死ねたと思うよ
悠仁は四階の廊下の窓硝子を蹴り破り、恵が居る場所まで飛び越えてきた。
飲み込まれようとしていた佐々木と井口を飛び込んできた勢いでつかみ引っ張り出した。
━━━━·····こっちは間違った「死」だ!
飲み込もうとしていた呪いを睨んだ。
「いいまぁ~」と悠仁へと体の向きを変え近づこうとしていた。
「なんじぃい~」と手を差し伸ばしたが恵が祓い、その場で倒れた。
少し落ち着き恵は一息ついた。
先ほど倒れた呪いを玉犬二匹が食べていた。
悠仁に抱き抱えられた佐々木は怪我もなく、静かに眠っていた。
ふと、佐々木の手から何かが落ち、悠仁は佐々木を抱えたままソレを拾った。
悠仁の拾ったソレは一本のどこかの指であり、年代物もだからなのか薄汚く汚れていた。
「はいはい。」と立ち上がろうとした悠仁の頭の上の天井が歪むのが見え、玉犬二匹が井口を咥え動き、恵は悠仁を突き飛ばした。
天井から何かが落ちてき、砂煙で何が起きたか見えなかった。
砂煙が消えるとラグビー場にいた二級相当の呪いが恵を捕まえていた。
つかまれていた腕をなんとか抜き出し、両手を使い鳥の型を創る。
だが、式神を出現させる前にその呪いは恵を壁に叩きつける。その場に居合わせた悠仁の横にいる玉犬の形が崩れていく。
二級相当の呪いは恵ごと壁に突進、突き破り渡り廊下の屋根に落ちた。
体を起こし、目眩がする状態で再び両手を組む。
呪いが恵に近づこうとしていたが、悠仁が後ろから素手で殴りつけた。
愛莉のところでも轟音が聞こえ、頭を上げ立ち上がった。
あまりよく見えなかったが、壁に大きな穴が開き、誰かが校内から弾け飛び、見たことないモノが後を追うように飛び出してきた。
何、アレ·····。
よく小さい頃から変なモノは見えていた。幽霊という類なのか、見ないフリをすれば居ないのと同じだから気にしないでいた。
でも、アレは今まで見たことないモノ。
それに一緒に壁を突き破って出てきたのは·····まさか。
ここにいろ、って言われた。でも、何かが学校内で起こっている。
大人しくしていなきゃいけないのか。
悠仁の言う通りにして待ってれば帰ってきてくれる?
·····このイヤな予感を現実にしたくない!
愛莉は柵をよじ登り、ゆっくり飛び降り敷地内に入った。
音のした方は渡り廊下らへん。
下からじゃ何が起こっているのか分からなかった。
傷一つつかない呪いは腕を振り上げる。
━━━━·····人を助けろ
振り上げた腕が悠仁へ降ろされるが、すんでのところでかわし、蹴りあげようとしたが悠仁よりも呪いの方が早く腕が悠仁の頭に当たる。
頭に当たった勢いで恵のとこまで吹っ飛び、恵の真顔から呪いの倒し方を聞かされる。
頭から血が次から次へと出てくるため頭痛がし始めていた。
恵はフラフラになりながら息が切れながら立ち上がった。
宿儺の指を見つめ、悠仁は意を決した。
「何を言ってんだ、こいつ」と悠仁を振り返った恵の目線には悠仁が宿儺の指を口に入れようとしていた姿だった。
引き止める間に悠仁は指を飲み込んでしまった。
渡り廊下の下に居た愛莉は恵の怒鳴り声に顔を上げる。
ここからじゃ何も見えない。
もう少し離れたら見えるかも。
真下から少し校門向きに移動すると、さっきのアレが見えた。
見えた瞬間ピリッと空気が変わった事に愛莉は気づいた。
なに·····。この不安な気持ちになるの·····。
でも、悠仁と恵の姿は確認は出来ない。声は聞こえたのに。
恐れていた事が起きたが、恵の思考には少し期待してしまう自分もいた。
特級呪物を喰われ怒りに狂った呪いが悠仁目がけて突進してきた。
それは下に居た愛莉にも状況が分からないままでも見えていた。
悠仁の手前まで来た瞬間、腕を振った悠仁により呪いの顔が一気に吹っ飛んだ。
まくり上げた悠仁の腕には見慣れない二本線が浮かび上がる。
突進していったアレがすぐに吹っ飛んだ様子が下からでも確認できた。
吹っ飛んだ呪いは悠仁の前で倒れ、ピクリとも動かなかった。
吹っ飛ばした悠仁をゆっくりと目で追った恵の目の前に居たのは、顔に紋章が浮かび上がっており、目を開いた悠仁は悠仁ではなくなっていた。
夜空を仰ぎ、高笑いをするその姿、声は悠仁じゃなかった。
なに、この声·····。イヤな予感がする·····。
さっきは何も感じなかったはずの愛莉はこの笑いを聞く前から急に重い空気になった気配を感じた。
悠仁の存在が感じず、違う何かが·····。
悠仁が着ていた服を宿儺は引きちぎる。
宿儺が倒した呪いが祓われ姿形が消えていく中、渡り廊下の屋根から外の街並みに宿儺は気づく。
何かを話す声に愛莉は恐る恐る後ろに下がっていく。下がれば下がるほど、屋根に誰が居るのかハッキリと見えてきた。
屋根に立っているソレに愛莉は見開き言葉を失った。
·····誰·····?
屋根のふちに立ち腕を広げ、この空気を体に感じる。
この気配、悠仁だけじゃない·····っ!
どうなってるの·····。
·····なんで·····。
なんで·····っ。
なんで·····っ!
愛莉の気配と声に宿儺は気づき、下に居た愛莉を見て大きく口を開き笑った。
宿儺と目があった愛莉は息が出来なくなるほど、何も出来ず立ち尽くした。
姿形は悠仁だ。
だが、彼の中にもう一人居る·····?
誰·····!
誰なの!?
恵の場所から屋根のふちに立ち、下を覗くと愛莉の姿があった。
なんの前触れもなく突然、ガシッと宿儺は自らの顔をつかんだ。
彼の気配がする。
さっきとは違い、濃い。でももう一人も同じぐらい気配は消えていない。
首をつかんだまま、左側は宿儺、右側は悠仁の表情になっていた。
首を抑えたまま宿儺の意識が悠仁に押され消えていく。
声のする恵を見ると警戒しながら、式神を出す準備をしていた。
︎︎ ︎︎
言葉を溜め、手に力が入る。
︎︎ ︎︎︎︎ ︎︎
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。