第7話

離れた二人
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2024/03/10 13:14




もう、前の悠仁には戻れない。






伏黒恵
伏黒恵
·····。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
·····愛·····?




アイツ·····両面宿儺が悠仁の中に居る。


どうやって、悠仁を守る?


虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛莉!!
茅 愛莉
考え事をしていたせいか、悠仁の声にハッとさせられ顔を上げた。
伏黒恵
伏黒恵
大丈夫か?
茅 愛莉
うん·····私は、大丈夫。
五条悟
五条悟
··········。


大丈夫なわけない。
これから悠仁は·····?


ずっと、死ぬまで宿儺と一緒に居なければならないのか·····?



私は·····?



これからどうしたらいい·····?


五条悟
五条悟
悠仁。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
ん?
悟は悠仁の額に人差し指と中指をトンッと当てた。その直後、意識が無くなった悠仁は悟に倒れこむように動かなくなった。
茅 愛莉
悠仁!?
伏黒恵
伏黒恵
何したんですか?
五条悟
五条悟
気絶させたの。
茅 愛莉
悠仁·····。
心配そうにしてるが、目つきは悟を睨んでいた。
五条悟
五条悟
おー、こわっ。大丈夫だって。
寝かせてるだけだから。何もしてないよ。そう睨みなさんなって。
茅 愛莉
·····。
五条悟
五条悟
ただねー。
これで、目覚めた時宿儺に体を奪われていなかったら、彼には器の可能性があるってことになるけど。
茅 愛莉
器·····。
五条悟
五条悟
さて、ここでクエスチョン。
彼をどうするべきかな。
伏黒恵
伏黒恵
·····仮に器だとしても、呪術規定にのっとれば虎杖は処刑対象です。
茅 愛莉
え·····処刑···って。悠仁は


処刑って、死刑·····?


伏黒恵
伏黒恵
でも、死なせたくありません。
茅 愛莉
·····伏黒·····君。
五条悟
五条悟
それは·····私情?
伏黒恵
伏黒恵
私情です。
なんとかしてください。


今日悠仁と初めて会って、そう時間も経ってないのに、こうやって悠仁を思ってくれてる人もいる。

嬉しそうに笑った悟は悠仁を片腕で捕まえながら、親指を立てた。
五条悟
五条悟
かわいい生徒の頼みだ。
任せなさい。
宿儺の器になったかもしれない悠仁を私はどう守ればいい?

見た目は変わらないし、いつもの悠仁なのに·····。



私の目には
別人になった悠仁しか映らない·····。




五条悟
五条悟
愛莉はどうする?
茅 愛莉
え?
伏黒恵
伏黒恵
もう呼び捨てですか。馴れ馴れしいですよ。
五条悟
五条悟
悠仁は東京に行く事になる。
東京の、呪術を学ぶための学校に。
茅 愛莉
·····そこに行けば、悠仁は幸せになれますか。
五条悟
五条悟
へ?
茅 愛莉
処刑されずに、宿儺とかいうヤツの器として一緒に生きて、呪術を学んで·····これから先·····悠仁は·····。
我慢していた涙がポロポロと頬を伝う。
茅 愛莉
幸せになれますか·····?
伏黒恵
伏黒恵
·····。
悟は悠仁を片腕でつかんだまま、愛莉に近づき頭に片方の手を置いた。
五条悟
五条悟
大丈夫だよ。それは僕が保障する。
·····もしかしたら、憂太と同じ類かな。



この子には何の呪力も感じない。
だけど、さっきのは·····。

·····下調べが必要かな。

五条悟
五条悟
君は君の事を考えときなさい。
愛莉の頭をわしゃわしゃと掻き乱して、ポンポンッと軽く叩いた。
茅 愛莉
どういう·····意味ですか?
伏黒恵
伏黒恵
一緒に東京に行くんだ。
茅 愛莉
なんで·····。
私何も出来ないし、呪術なんて·····。
伏黒恵
伏黒恵
虎杖の保護者だろ?何しでかすか分からないし、愛莉ちゃんが来てくれたら俺らは助かるけど。
茅 愛莉
伏黒君·····。
五条悟
五条悟
んーその前に、あの子らを病院に連れて行って、
悠仁に助けられ、被害に遭わないよう安全なところで座って避難していた佐々木達を指差し、
五条悟
五条悟
アレもどうしようか。
穴がガッツリ空いた校舎を指差し、恵に視線を移した。
伏黒恵
伏黒恵
なんですか。
俺のせいですか。
五条悟
五条悟
別に恵のせいだなんて言ってないよ。
あれをどうする?って聞いただけ。
伏黒恵
伏黒恵
何とかするしかないでしょ。それに、そこは五条先生の役目でしょ。
五条悟
五条悟
僕は悠仁をひとまず高専に連れて行かなきゃいけないし。喜久福食べなきゃいけないし。
伏黒恵
伏黒恵
喜久福いつでもいいでしょうよ。
茅 愛莉
あの·····。
二人のやり取りに愛莉が手を上げる。
茅 愛莉
悠仁を任せても大丈夫なんですよね。
五条悟
五条悟
僕に任せれば、大丈夫だよ。
悟の自信満々な一言に愛莉は前を見据えた。
茅 愛莉
私が何とかしてみます。
伏黒恵
伏黒恵
どうやって·····?
茅 愛莉
こういう時に生徒会の権利を使うの。
いつも悠仁のあと拭いはさせられてて、慣れてるし。·····何とかしてみる。
伏黒恵
伏黒恵
·····。
茅 愛莉
代わりに、悠仁を·····よろしくお願いします。
頭を下げた愛莉に二人は目を点にしていたが、悟はニコッと笑った。
五条悟
五条悟
よしっ、じゃあ愛梨にここは任せて、僕は先に戻ってるよ。
恵も傷の手当て硝子にやってもらうから、ひとまず帰るよ。
恵はチラッと愛莉を見て、判断に迷っていた。
茅 愛莉
あのー、あと一ついいですか?
五条悟
五条悟
ん?
茅 愛莉
降りたいので降ろしてもらいたいんですけど·····。
五条悟
五条悟
あ·····。
ここはまだ渡り廊下の頭上。通常じゃ簡単に降りられない。
悟に抱き抱えられ、連れて来られたが連れてきた本人が居なくなったら降りられなくなる。


五条悟
五条悟
ごめん、ごめん。捕まってて。
再び悟につかまり降ろしてもらったが、片腕にはずっと悠仁を抱えている。華奢な体つきに見えるが、相当な力持ちだ。
五条悟
五条悟
恵は自分で降りれるよね。
伏黒恵
伏黒恵
当たり前でしょ。
茅 愛莉
でも、怪我して·····。
五条悟
五条悟
大丈夫、大丈夫。
悟の後ろで軽々と恵は飛び降りてきた。
伏黒恵
伏黒恵
あの人達はどうするんですか。
愛莉も同じ事を思っていた。佐々木達をそのままにする事は出来ない。
五条悟
五条悟
高専から手伝い回したから大丈夫だよ。
病院にひとまず連れて行って、あとから硝子に治療させる。
茅 愛莉
·····良かった。
五条悟
五条悟
後のことは、愛莉に任せてもいいかな。
茅 愛莉
はい。
五条悟
五条悟
じゃあ、恵も帰るよ。
伏黒恵
伏黒恵
俺はひとまずここに残ります。
五条悟
五条悟
え、残んの?
伏黒恵
伏黒恵
怪我の治療は普通の病院でも出来ますよね。
もし必要な時には自分で硝子さんのところに行きますよ。それに
愛莉の方を向き、
伏黒恵
伏黒恵
あの穴の件、俺が居た方が都合いいだろうし。
茅 愛莉
·····伏黒君。
二人を見てニヤニヤが止まらない悟だった。
五条悟
五条悟
···いいねー、青春だねぇ。
伏黒恵
伏黒恵
何言ってんですか。
五条悟
五条悟
ううん、こっちの話。
じゃあ、先に帰るよ。
こっちが終わったら、また連絡するから。
「よろしくねー。」と言いながら、悟はその場から居なくなった。
茅 愛莉
き、消えた!
伏黒恵
伏黒恵
虎杖は五条先生に任せれば大丈夫だよ。
茅 愛莉
五条先生の事信頼してるんだね。五条先生の事信頼してる、伏黒君を信じるよ。
伏黒恵
伏黒恵
いや、信頼っていうか、信用はあまりしてないっていうか。見てて気づいたと思うけど、生徒怪我してんのに写メ撮るような人だから。
茅 愛莉
うん、変な人だって思ったよ。生徒よりもお菓子なんだなって。
さっきそういえば撮ってたな、と思い出し笑ってしまった。



その姿に恵は微笑んだ。
伏黒恵
伏黒恵
ちょっと元気出た?
茅 愛莉
え·····?
伏黒恵
伏黒恵
ずっと暗そうな表情してたから。
虎杖が戻るまでは頑張ろう。
茅 愛莉
·····伏黒君。
さっき会ったばかりなのに悠仁を庇ってくれて、自分も怪我してキツイはずなのに、終始怪しい教師よりも信用出来そうな彼だったから信じてみようと思った。


ここまで気をつかって優しくしないよ、普通。

茅 愛莉
ありがとう。
校門入口に黒い車が止まり、そこから声が聞こえた。
さっき言ってた高専からの遣いが来たようだ。
茅 愛莉
ひとまず、伏黒君も先輩達と一緒で病院で手当てしなきゃ。そろそろ近所の人達も音に気づいて来ちゃうだろうし。
伏黒恵
伏黒恵
そのために俺も残ったんだよ。
通報もわざとして、事故に遭ったていで病院に行った方がスムーズじゃないかな。
茅 愛莉
でも、怪我してるの早く治療しなきゃ。
校門まで歩こうと踵を返すが、恵はふらついていた。頭をぶつけ、脳震とうを起こしていた。
伏黒恵
伏黒恵
大丈夫だよ。一人で歩ける。
恵の制止を振り切り、愛莉は肩を貸し高専関係者のとこまで歩く。
茅 愛莉
私は伏黒君を信じる事にしたの。代わりにこれぐらいは手伝わせて。
伏黒恵
伏黒恵
·····。
「大丈夫ですか?」
高専関係者なのか、スーツ姿の男性が恵の肩を支えた。
伏黒恵
伏黒恵
警察に通報して下さい。俺が事情説明します。
後、校舎に二人怪我人が居ます。病院への手配を。
茅 愛莉
私も説明する!
どっちみち、先生達にも連絡いくだろうし。
伏黒恵
伏黒恵
分かった。
よろしくお願いします。
「分かりました。」

高専関係者は携帯を取り出し、警察に通報した。恵に代わり通報内容を説明する。
茅 愛莉
·····。




悠仁·····大丈夫だよね。




私は私に出来る事を頑張るよ。








悠仁も


宿儺に負けないで·····━━━━━━




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