第3話

呪いの元
1,847
2021/09/07 10:00


総合受付にて、悠仁は死亡診断書等書類の手続きをしていた。
待ち合いのイスには愛莉が俯いて座っている。目は泣き腫れ、鼻は赤くなっていた。

「うん、必要な書類はこれで全部。」
看護婦は悠仁に書いてもらう書類を渡した。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
ウッス。お世話になりました。
「本当に大丈夫?·····愛莉ちゃんも。」
看護婦に名前を呼ばれて、愛莉は顔を上げた。
茅 愛莉
私は·····大丈夫··です。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
·····。
精一杯の笑みを見せたが、大丈夫そうには見えなかった。
初めての大切な人の死。受け入れるのに時間がかかる。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
····こういうの初めてなんでまだ実感湧かないかな。
でも、いつまでもメソメソしてっと爺ちゃんにキレられるし、後は笑ってこんがり焼きます。
「言い方·····!」
悠仁の言い方に受付にいた看護婦は苦笑いした。
茅 愛莉
悠仁·····。



自分達の気配以外を感じ、悠仁が振り返ると人が立っていた。
伏黒恵
伏黒恵
虎杖悠仁だな。
茅 愛莉
あれ、あなたさっきの·····。
学校に来ていた他校生らしき人。
茅 愛莉
病院着くの遅かったですね。
確か夕方に教えて、私より先に学校を出て行ったはず。てっきり私より先に悠仁に会ってると思ってたのに。
今は夜になり、だいぶ時間が経っている。
伏黒恵
伏黒恵
教えてくれた杉沢病院が二つあって、そっちに行ってたら遅くなりました。
茅 愛莉
え、二つありました?
「あー多分、それ近くの個人病院で平仮名ですぎさわって病院じゃないかな。」
受付から看護婦が顔を出して教えてくれた。
茅 愛莉
そうだったんだ。
ごめんなさい、二つあるなんて知らなくて。
伏黒恵
伏黒恵
大丈夫です。
こうやって見つかったし。
恵と愛莉のやり取りに状況がつかめない、悠仁は眉をひそめた。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
で?
俺に用事?
伏黒恵
伏黒恵
呪術高専の伏黒だ。
悪いがあまり時間がない。
茅 愛莉
(呪術·····高専·····?)
伏黒恵
伏黒恵
オマエが持ってる呪物はとても危険なものだ。今すぐこっちに渡せ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
じゅぶつ·····?
恵はスマホを取り出し一枚の写真を悠仁に見せた。
伏黒恵
伏黒恵
これだ。持ってるだろ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
んー?
あーはいはい。拾ったわ。
写真の箱、中身を見ると思い当たる節があった。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
俺は別にいいんだけどさ、先輩らが気に入ってんだよね。
理由くらい説明してくんないと。
伏黒恵
伏黒恵
·····。
恵は日本国内の怪死者、行方不明者の数が年平均10000人を超え、その殆どが人間から流れ出た負の感情❝呪い❞による被害だと説明した。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
呪いぃ?
茅 愛莉
·····10000人。そんなに居るんだ。
伏黒恵
伏黒恵
お前が信じるかどうかなんてどうでもいいんだよ。
特に学校や病院のような大勢の思い出に残る場所には呪いが吹き溜まりやすい。
スマホの写真を再び悠仁に見せた。
伏黒恵
伏黒恵
だから学校には大抵❝魔除け❞の呪物が置いてあった。
オマエの拾ったものもソレだ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
ならいいじゃん。
何が危険なの。
伏黒恵
伏黒恵
魔除けと言えば聞こえはいいが、より邪悪な呪物を置くことで他の呪いを寄せ付けない。
長い年月が経ち封印が緩んで呪いが転じた。今や呪いを呼び寄せ肥えさせる餌。
話の流れに追いつけない愛莉は立ち上がり、悠仁に近づいた。
茅 愛莉
ねぇ、その拾ったやつってこの前、佐々木先輩達と言ってやつ?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
·····多分。
茅 愛莉
そんな危険なものなの?
伏黒恵
伏黒恵
お前の高校に置かれていたのは特級に分類される危険度の高いものだ。
人死にが出ないうちに、渡せ。
茅 愛莉
特級····っ!
虎杖悠仁
虎杖悠仁
だから俺は別にいいんだって。
促され、ポケットに入れていた箱を恵に投げた。
受け取った恵は箱を開けるため、蓋を下にずらした。
伏黒恵
伏黒恵
中は空になっていて、何も入ってなかった。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
先輩に言えよ。
伏黒恵
伏黒恵
(俺が追ってきたのは、箱にこびりついた呪力の残穢ざんえ·····!!)
病院って事を忘れ、恵は声を荒らげ悠仁の胸元をつかんだ。
伏黒恵
伏黒恵
中身は!?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
だァから先輩が持ってるって!!
伏黒恵
伏黒恵
ソイツの家は!?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
知らねぇよ。確か泉区の方·····。
ふと、何かを思い出し、悠仁は黙り込んだ。
茅 愛莉
悠仁?
伏黒恵
伏黒恵
なんだ?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
そういや今日の夜学校でアレのお札剥がすって言ってたな。
茅 愛莉
え·····っ。
恵の顔が強張り、目を見開いていた。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
え·····もしかして、ヤバイ?
伏黒恵
伏黒恵
ヤバイなんてもんじゃない。
茅 愛莉
(なんだろう·····この胸騒ぎ)
伏黒恵
伏黒恵
ソイツ、死ぬぞ。



·····イヤな予感がする。




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