第2話

生きる糧の最期
2,587
2022/07/13 12:19


現在の時刻、夜中。



宮城県仙台市
杉沢第三高校



一人の影が学校に現れる。
伏黒恵
伏黒恵
百葉箱!?
そんな所に特級呪物保管するとか馬鹿すぎるでしょ。
五条悟
五条悟
《アハハ、でも、おかげで回収も楽でしょ。》
電話の相手先、五条悟に言われた通り伏黒恵は百葉箱を開ける。
伏黒恵
伏黒恵
·····ないですよ。
五条悟
五条悟
《え?》
伏黒恵
伏黒恵
百葉箱空っぽです。
五条悟
五条悟
《マジで?ウケるね♪》
伏黒恵
伏黒恵
ぶん殴りますよ。
五条悟
五条悟
《それ、回収するまで帰ってきちゃ駄目だから。》
伏黒恵
伏黒恵
(今度マジで殴ろう)










家庭科準備室を心霊現象研究会の部室として、3人の生徒が出入りしていた。



虎杖悠仁
虎杖悠仁
本当にいいんすね、先輩。
心霊現象研究会オカルトけんきゅうかいのメンバー、佐々木と井口は頷いた。

虎杖悠仁
虎杖悠仁
よっしゃ、いくぞ!!
彼等の手の先にはひらがな表が書かれた紙が置かれ、人差し指で小銭一枚を3人で押さえていた。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
こっくりさん、こっくりさん。
生徒会長がギリ負ける生き物を教えてください。
3人が押さえた小銭はゆっくり動き、「くりおね」を表した。
悠仁&佐々木&井口
「「「ぶはははは!クリオネだってぇー!!雑ッ魚!」」」


杉沢第三高校 生徒会長
オカ研ッ!!
ドアを勢い良く開けると、生徒会長が般若顔で現れた。

その後ろには飽きれて立つ少女一人。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
おっプランクトン会長。
どったの?
杉沢第三高校 生徒会長
·····殺すぞ。
茅 愛莉
悠仁達こそ何してんの?
会長の後ろから悠仁の幼なじみ、茅愛莉ちがやあいりが教室を見渡しながら入ってきた。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
お、愛!
茅 愛莉
·····なんで、こっくりさん?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
会長の弱点探そうと思ってさ。
茅 愛莉
それ、当たるの?
杉沢第三高校 生徒会長
当たる、当たらないではない!
愛莉の前に立ち塞がり、メガネを持ち上げ3人を睨んだ。
杉沢第三高校 生徒会長
活動報告のない研究会にいつまでも部室をあてがうほど、この学校は広くない!
言ったハズだ。
佐々木先輩
佐々木先輩
茅の力でどうにかなれなかったの?
茅 愛莉
私にそんな力あるわけないじゃないですか。
·····ただの、書記ですし。
杉沢第三高校 生徒会長
ここは今日から女子陸上部の更衣室となる。
速やかに立ち去れ!
虎杖悠仁
虎杖悠仁
ウチの先輩方を舐めてもらっちゃ困るな会長。
バンッと分厚い書類を机に置いた3人は会長にガンを飛ばすよう不気味に笑う。

3人はラグビー場が閉鎖されている理由がおかしいと言うのだ。
会長は利用者の多くが体調不良になり、入院していると説明したが、オカ研は否定。


彼らが体調を崩す直前奇妙な物音や声を聞いている、と。
そこから、佐々木は30年前の新聞記事を切り抜いたファイルを会長に見せた。

佐々木先輩
佐々木先輩
建設会社の吉田さんが行方不明になってるんです。最後の目撃情報はココ!
建設途中のこの学校!
茅 愛莉
それって····
佐々木先輩
佐々木先輩
借金をしていた吉田さんはその筋の人からも狙われ、ラグビー場に吉田さんの死体が埋まっていたから、一連の騒ぎは彼の怨霊によるもの!
茅 愛莉
ラグビー場が閉鎖されたのって
杉沢第三高校 生徒会長
マダニが原因だそうだ。
佐々木先輩
佐々木先輩
そうなの?!茅!?
茅 愛莉
そう·····聞きましたけど。
3人の勢いは消え、落胆した姿が残った。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
だからなんだよ!
オカ研がオカルト解き明かそうとしてんだから立派な活動報告だろーが!!
杉沢第三高校 生徒会長
ガキの遊びじゃないんだよ!!
妙な噂ばっかながしやがって!そもそも1番の問題は·····
茅 愛莉
悠仁だって。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
へ?
杉沢第三高校 生徒会長
オマエの籍がオカ研でなく、陸上部にあり、同好会定員の3名に達していないということだ!!
茅 愛莉
え?
佐々木&井口
「「虎杖ぃ~」」
虎杖悠仁
虎杖悠仁
いや、俺ちゃんとオカ研って書いたよ?
茅 愛莉
私、悠仁から希望の紙を渡された時はオカ研になってましたよ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
ほら~証人いるじゃん。
「俺が書き換えた!」
ドアに陸上部顧問、高木が立っていた。
茅 愛莉
(また出たよ、悠仁のストーカー教師。)
「虎杖、全国制覇にはオマエが必要だ。」
杉沢第三高校 生徒会長
(生徒より問題のある教師がきてしまった。)
虎杖悠仁
虎杖悠仁
しつけーな!何べんも断るって言ってんだろ!
茅 愛莉
そうですよ。
悠仁にだって、選ぶ権利あります!
虎杖悠仁
虎杖悠仁
あ~い~ぃぃ。もっと言ってやって!
「駄目だ!」
虎杖悠仁
虎杖悠仁
駄目なの!?
「茅!」
茅 愛莉
はい。
「お前は生徒会という権力を使い、虎杖を有利に回そうと手を使っているだろ!」
茅 愛莉
うっ!何故それを·····
杉沢第三高校 生徒会長
そうなのか!?茅!
茅 愛莉
すいません、会長。
·····ごめん、悠仁。
これ以上私には無理だわ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
マジか!
「だが俺も鬼ではない!正々堂々陸上競技で勝負だ!」
虎杖悠仁
虎杖悠仁
ほう。
茅 愛莉
(アンタも自分が有利な方に回してんじゃん。)
「俺が負けたらオマエのことは諦めよう。だがしかし!!俺が勝ったら·····」
茅 愛莉
悠仁やめなって。
そんな約束、また口だけだって。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
皆まで言うな。面白ぇ····やってやんよ。
茅 愛莉
·····聞いちゃいねぇ。
杉沢第三高校 生徒会長
(入部届を書き換えるのは正々堂々なのだろうか·····。)
ブーブーッとポケットに入ったスマホのバイブが反応し、愛莉は取り出した。


部室内は色んな意味で暑苦しく、部室内から出てすぐの踊り場の階段に移動すると、鳴っていたスマホに出た。
茅 愛莉
もしもし、茅です。
「あ、愛莉ちゃん?悠仁くん一緒に居る?」
病院からの電話で、担当してくれている看護師さんだった。
茅 愛莉
今はちょっと立て込んでて·····。
どうかしたんですか?
電話で必要な物を持ってきてくれ、という内容だった。
手帳を取り出し、手帳の空欄の部分にメモをし、悠仁に渡すため破った。
茅 愛莉
分かりました、
悠仁に伝えておきます。
電話を切り、さっき居た部室に戻った。
茅 愛莉
あれ?·····もう行ったの!?
部室内は誰一人居なくなっており、教室の窓から校庭を覗いた。
既に、悠仁含め陸上部顧問達も集まっていた。周りにはガヤの他の部活をしていた生徒達が囲んでいた。

茅 愛莉
もう、この学校自由人多すぎでしょ!!
ふと、さっき話の話題になっていたラグビー場を見ると、人が一人立っていた。
茅 愛莉
あんなとこで、何してんだろ·····。








ラグビー場をうろついていた恵は周りを見渡した。
伏黒恵
伏黒恵
なんだこの、ラグビー場。
死体でも埋まってんのか?
恵の頭上には得体の知れないモノがいた。
伏黒恵
伏黒恵
(だとして、このレベルがウロつくなんて·····。おそらく2級の呪い。
例の呪物の影響か·····?)
頭を抱えながら、立ち入り禁止と書かれた規制紐をまたぐ。

伏黒恵
伏黒恵
(さっさと回収しないとな···)
頭を抱えながら階段を登り、スマホを取り出した。
伏黒恵
伏黒恵
クソ!気配がデカすぎる。
これじゃ潜入した意味がまるでねー。
すぐ隣に在るようで遥か遠くにあってもおかしくない。
伏黒恵
伏黒恵
特級呪物·····厄介過ぎだ。
恵のスマホ画面には手のひらサイズの古びた箱があり、中にはお札がビッシリと貼られ包まれたモノが写し出されていた。
伏黒恵
伏黒恵
(気が進まないが一度学校も閉鎖。呪いを祓った後隅々まで探すしか·····)
遠くからガヤの声が響いており、恵の足はそちらに向かった。


校庭では人だかりが出来ており、その中心には陸上部顧問の高木と悠仁がいた。
「陸部の高木と西中の虎杖が勝負すんだよ!」
「種目は!?」
「砲丸投げ!」
14mの記録を高木が叩き出した。

少し離れたところにオカ研のメンバー2人も立っていて、心配そうに悠仁達を見ている。
佐々木先輩
佐々木先輩
ねぇ、虎杖って有名なの?
井口先輩
井口先輩
眉唾だけど、SASUKE全クリしたとか。ミルコ・クロコップの生まれ変わりだとか。
佐々木先輩
佐々木先輩
死んでねえだろ。
茅 愛莉
先輩、ここに居た!
ひそひそと話してる2人に愛莉が駆け寄った。
茅 愛莉
何してるんですか?
佐々木先輩
佐々木先輩
砲丸投げでどちらが遠くに投げられるか。だって。
井口先輩
井口先輩
そういやぁー、ついたあだ名が“西中の虎”だ。
茅 愛莉
懐かしい、あだ名ですねー。
佐々木先輩
佐々木先輩
·····ダサくない?
茅 愛莉
ダサいですよ。本人気にしてないですけど。


砲丸持って悠仁は陸上部顧問の高木に声をかけた。


虎杖悠仁
虎杖悠仁
ねぇねぇ、投げ方?
よく分かんねぇんだけど、適当でいい?
「ん?まあこの際それでファウルはとらん。」


(すまんな、短距離選手のオマエに力勝負を挑んで·····。だが、これで俺がどれだけ本気が伝わ)
腕を組んでしんみりと高木が自己陶酔しているうちに悠仁は自己流で投げた。

「·····30mぐらい。」
近くにいた生徒達が適当に応えたが、悠仁が投げた砲丸がサッカーゴールのゴールポストにめり込んでいた。
悠仁が投げた場所からは約30mぐらい。距離は間違えていなかった。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
おっし。俺の勝ち。
高木は目が点になったまま固まっていた。
佐々木先輩
佐々木先輩
虎ってよりゴリラじゃない?
井口先輩
井口先輩
ピッチャー投げだったな···。
茅 愛莉
相変わらず、すげー。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
じゃっ先生、俺、用事あっから。
ナイススローイング。
佐々木先輩
佐々木先輩
虎杖アンタ別に無理してオカ研残らなくてもいいのよ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
え。
佐々木先輩
佐々木先輩
運動部の方が才能発揮できるんじゃない?
虎杖悠仁
虎杖悠仁
いや色々あって5時までには帰りたいんだよね。
でもウチ全生徒入部制じゃん。
そしたらさあ
佐々木先輩
佐々木先輩
(何もしなくていいのよー。ユウレイでいいのよー。オカ研だけに。)
虎杖悠仁
虎杖悠仁
って、言ってたじゃん。だから愛に入部届け出してもらってー。
·····先輩らがいいならいさせてよ。結構気に入ってんだ、オカ研の空気。
茅 愛莉
私からも悠仁の事これからもよろしくお願いします。
佐々木先輩
佐々木先輩
そういうことなら私らは別に。
井口先輩
井口先輩
なあ。
ニコニコして2人は悠仁を見て、デレデレしていた。
茅 愛莉
あ、そうだ!
悠仁、さっき病院から電·····
虎杖悠仁
虎杖悠仁
ああっ!もう半過ぎてんじゃん!
愛、先に行くからな。
さっき書いたメモをポケットから取りだし、悠仁に渡そうとしたが、既に居なくなっていた。
茅 愛莉
あれ·····悠仁は?
佐々木先輩
佐々木先輩
もう走って行ったわよ。
茅 愛莉
あぁーもう、無駄に早いんだから!
今から追いかけても間に合わない。私が準備して持って行った方が早い。
茅 愛莉
先輩、私も帰ります。
2人に頭を下げ、悠仁のカバンと自分のカバンを取りに校舎に戻った。





悠仁の砲丸投げを恵はガヤに紛れ遠目で見ていた。
伏黒恵
伏黒恵
(凄いなアイツ。呪力なし。素の力でアレか。禪院先輩と同じタイプかな·····。)
悠仁がこちらに走って来るのが見えたが、見向きもしないで横をすれ違う瞬間。
伏黒恵
伏黒恵
すれ違う悠仁との間の空気が変わった。
伏黒恵
伏黒恵
(呪物の気配!明らかに今強くなった!)
走っていく悠仁に声をかけようと振り返った。
伏黒恵
伏黒恵
おい、オマエ!
·····って、速すぎんだろ!!
既に悠仁の姿は校門まで小さくなっていた。
「アイツ、50m3秒で 走るらしいぞ。」

「車かよ。」
伏黒恵
伏黒恵
·····クソッ。


恵は悠仁と関わりがある人物を探し、声をかけた。
伏黒恵
伏黒恵
あの、さっき砲丸投げしていたアイツと知り合いですか?
茅 愛莉
え····?
カバンを取りに学校を後にしようとしていた、愛莉に声をかけた。
茅 愛莉
あれ、さっきラグビー場のとこにいた····。
本校の生徒で見かけた事ない気がする。
伏黒恵
伏黒恵
·····知り合いですか?
茅 愛莉
あ、悠仁の事?
知り合いですけど、悠仁に何か用ですか?
他校の生徒だとして、何故ここに·····。
伏黒恵
伏黒恵
彼はどこに急いでいたんですか?
茅 愛莉
何故·····それを知りたいんですか?
伏黒恵
伏黒恵
聞きたいことがあるんです。
茅 愛莉
·····。
悠仁に用がある、って、アイツ何したのよ!
茅 愛莉
·····病院です。
悠仁の祖父が入院してるので。
伏黒恵
伏黒恵
どこの病院ですか?
特級呪物の気配で場所は探せば見つけられるだろうが、一刻も早く見つけなければ民間人への被害が危ぶまれる。
茅 愛莉
杉沢病院·····です。
恵は頭を下げ悠仁の後を追うように学校を後にした。
茅 愛莉
何なのあの人····。
病院名言っちゃって大丈夫だったかな。
でも何か深刻そうだったし····。
それに何だろ·····。ちょっと、カッコ良かったな·····。

·····じゃなくて!病院!

茅 愛莉
ヤバっ!急がなきゃ!
時計を確認し、愛莉も学校を後にする。




一足先に病院に着いていた悠仁は病院前に買っていた花を取り替えるため花瓶を洗っていた。
虎杖倭助
虎杖倭助
悠仁·····最期に言っておくことがある。
ベッドに座り込んでいた悠仁の祖父、虎杖倭助は窓を見つめ悠仁に話しかけた。
虎杖倭助
虎杖倭助
オマエの両親のことだが
虎杖悠仁
虎杖悠仁
いいよ、興味ねーから。
虎杖倭助
虎杖倭助
·····。
バッサリ悠仁に切り捨てられ、倭助は一瞬間を置き、再び息を整えた。
虎杖倭助
虎杖倭助
オマエの!両親の!ことだが!
虎杖悠仁
虎杖悠仁
だから、興味ねーって。
爺ちゃんさあ、死ぬ前にカッコつけようとすんのやめてくんない?
虎杖倭助
虎杖倭助
オ·····オマエ·····男はカッコつけて死にてぇんだよ!クソ孫が!
それにな!愛莉の事も考えて話そうとしてんじゃねぇか!オマエのためだけじゃねぇ!空気読め!
虎杖悠仁
虎杖悠仁
愛は大丈夫だよ。俺よりしっかりしてるし。
虎杖倭助
虎杖倭助
オマエはまた甘えおって·····!
なんだ、その花は!
洗った花瓶に買って来た花を入れる悠仁を見て倭助は悪態をついた。
虎杖倭助
虎杖倭助
花とかもいちいち買ってんじゃねぇ。貯金しろ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
爺ちゃんにじゃねぇよ。看護婦さんに買ってんだ。
虎杖倭助
虎杖倭助
尚更だ馬鹿。
だんだんグチグチと文句を言う倭助に呆れてくる悠仁。
虎杖倭助
虎杖倭助
つーか、部活はどうしたよ。こんな消毒くせぇところでサボってんじゃねー。
しかも愛莉はどうした?お前また愛莉に任せて来たな。オマエが来るなら、愛莉に来てもらった方が年寄りは元気になるんだよ。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
うるせえなぁ!部活は5時前に終わんの!
愛莉は生徒会の仕事で忙しいから後で来んだよ!
俺だって暇じゃなきゃいちいち見舞いなんてこねーよ!
虎杖倭助
虎杖倭助
ケッ、ゆとりかよ。
悠仁に背を向け横になった。
倭助に呆れた悠仁は窓枠で花を花瓶にさし花を整えた。
虎杖倭助
虎杖倭助
·····悠仁。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
んー?



ナースステーションでは頼まれていた物を買い出しに行っていた愛莉が到着し、受付をしていた。
虎杖倭助
虎杖倭助
オマエは強いから、人を助けろ。手の届く範囲でいい。救える奴は救っとけ。
迷っても感謝されなくても、とにかく助けてやれ。
いつもの倭助じゃない雰囲気に悠仁は振り返った。
虎杖倭助
虎杖倭助
·····愛莉を頼むな。しっかりしてるアイツは俺より強い。だが中身は弱い、脆い。守ってやれんのはオマエだけだ。


受付を済ませた愛莉は倭助の病室に行く途中で会った看護婦と挨拶をした。
虎杖倭助
虎杖倭助
オマエは大勢に囲まれて死ね。
俺みたいになるなよ。


急に黙り込んだ倭助に悠仁は不審に思った。
イヤな予感がした。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
·····爺ちゃん?
茅 愛莉
ごめん、遅くなって!
助じぃー来たよー!
倭助の病室を開けると、悠仁はうつむいて黙って立っていた。倭助を見ると、眠っていた。
茅 愛莉
あ、ごめん。寝てたんだ。
病院から電話あって、持ってきて欲しい物を頼まれてさ、悠仁すぐ居なくなっちゃうから代わりに·····
何も言わず、顔を上げない悠仁に不安になる。
茅 愛莉
悠·····仁·····?
覚悟決め頭を上げた悠仁の目には涙が溜まっていた。
その姿に愛莉は何が起きたのか察してしまった。肯定したくない自分がいる。
震える手でナースステーションに通じるナースコールに手を伸ばした悠仁は唇を噛みしめた。
「はい、どうされました?」
何も知らない看護婦の声に言葉に詰まった。
自らの口から言ってしまえば認めてしまう。

愛莉はゆっくりと悠仁の元に近づいた。
倭助の表情を見てもただ眠っているだけだ。悠仁が間違えてるだけだ。
「·····虎杖さん?」
そう思いたかったのに。




「·····爺ちゃん死にました。」




愛莉の手にあったコンビニの袋がゆっくりと崩れ落ちていった。



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