ある年の夏休み。
冷房という文明の進化に、多大なる感謝を示すほどに外は暑い。最近は天気予報で、「真夏日」というワードを聞かない日はないだろう。
小学生からの仲である海斗と波は相棒という言葉が
よく似合う関係だ。
いつものように海斗の家で宿題を進める。
高校生ともなればさすがに莫大な量になる課題に2人で頭を抱えながら、いつもなんだかんだ楽しんでいる。
波よりもはるかに頭のいい海斗。高校の定期テストとなれば問題も難しくなるにも関わらず、入学当初からトップ10人から外れたことは無い。水泳部に所属しており、小麦色に焼けた肌がなんとも男子高校生らしい。
そして、頭こそあまりよくないものの、勉強以外は何をやらせても人並み以上の腕前の波。運動神経がいい上に歌も上手いと、オールラウンダーとして学年でも有名人である。
そんなふたりだ。相棒と言われるのも頷けるだろう。
学校ではもっと大人数で過ごしているが、夏休みなこともあって、2人で過ごすことが多い。
それぞれの両親も仲が良く、門限をすぎていても、どちらかの家にいれば特に怒られることも無いほどである。
家の近くにある程度大きなビーチがあり、地元で遊ぶ時は決まってそこだった。
その時、インターホンがなった。
しばらくすると、玄関の方から盛り上がる声がする。
階段を上がる足音が1人ではない。
蒼空は、波と海斗の親友で、中学時代はずっと一緒に行動していた仲間だ。高校が違うが故に学期中はほとんど関わることは無いが、長期休みになるとよく遊びに来たり、遊びに行ったりする。
それから何時間か喋りながら宿題を進めた。
結構な量を進めた3人は満足気に海斗の家から出た。
各々が家路に着くなか、波はふらりと海に立ち寄った。夕日で紅く光る水平線を眺めて、目を閉じる。この時間が波は大好きだった。
自分の能力に気がついたのも、十数年前の同じ時期だった。遊び疲れた日の夕方、ビーチで目を閉じると、夢を見ているような感覚になった。自分は今ビーチにいるはずなのに、学校にいたり、家にいたりする。それだけなら、うたた寝をしていたと思っていたのだが、そうは思わなかった。なぜなら周りの音が聞こえたからである。夢を見ているようなのに、すぐ側で波の音が聞こえた。
そして、そんな不思議な体験の次の日、夢のような感覚の中で見たことが、そっくりそのまま起こった。
信じられなくて、何度も何度も同じ方法で試した。そして、「明日起こること」が見えるということが判明した。ただ、あくまで「明日」だ。今日見えたことは明日起こることだが、明日になってしまえば、今日見たことは見れない。未来予知ではないのだ。つまり、明日なにか予想外なことや十分に未来が変わる可能性のあることが起きてしまったら、今日見た明日はあてにならない。
誰もいない海にポツリと打ち明けた。