第7話

No.6
151
2022/08/18 21:12
海斗
波が自殺なんかありえないだろ…
蒼空
俺だって信じたくないよ
あの波が、まさか自殺なんてするわけが無いのに、1度思いついてしまった考えはなかなか頭から離れない。

「絶対にない」、そう分かっているのに、ほかの可能性が見つからない。波の行方の選択肢も、さっきまでたくさんあったはずなのに、全て頭から出ていってしまった。この仮説が正しいのであれば、昨日の波の行動を全て説明できてしまうのが怖かった。
海斗
そんな…そんなわけない…
あいつはきっと、どこかでまだ生きてる
蒼空
辛いけど、その証拠はないでしょ?
蒼空
でも、波が自ら海に身を投げたなら説明はつく。証拠があるのと変わらないよ
海斗
いやだ…波、俺……
海斗は悲しみが大きすぎて、気持ちの整理がつかなくなっていた。立っていられなくなり、その場に崩れ落ちた。その時、


「落ち着けって…」

ふと聞こえた蒼空の言葉に、海斗は無性に腹が立った。波はいなくなっただけなのに、勝手に死んだことにして話を進めて、悲しんでる様子もなく、しまいにはなだめてくる。耐えられなかった。
海斗
…ぅるせーよ!
海斗
お前に俺の何がわかんだよ!
どうせお前は波とかどうでもいいんだろ
海斗
いなくなっても、…死んでても!
蒼空
感情的になっても何も変わらないと
思っただけだよ…
海斗
もういい、
お前とは話が合わない
海斗
やっぱ1人にしてくれ
蒼空
……
こんなはずじゃなかった、けんかするつもりなんてなかった。2人とも思っていたはずなのに、その意に反して衝突してしまった。

なんでこんな時に…海斗の心の中はぐちゃぐちゃになっていた。どうしても整理のつかない心の中に、どうしたらいいのか分からなくなった海斗は、とりあえず家に帰ることにした。
海斗
ただいま…
誰も家にいないのか、返事はなかった。
何もする気になれなくて、自室のベッドに潜り込んだ海斗。特に寝るつもりもなかったが、ベッドに入ると自然とまぶたが落ちてくる。そのまま海斗は眠りに落ちた。













気がつくと、海斗はいつも登校に使っている大通りにいた。人通りも車通りも多い、いつも少し危なかっしい道路だ。

いつものようにその道を歩く海斗。

すると向かいから、小さい幼稚園児を何人か連れた幼稚園の先生が歩いてきた。海斗が少し遅い時間に家を出るといつも会う、近所の幼稚園のお散歩だった。ある程度顔見知りになった先生と、軽い会釈を交わしてすれ違おうとしたその時、急に先生が胸を抑えて倒れてしまった。

驚いた海斗は、とりあえず先生に近づく。
海斗
だ、大丈夫ですか…?
幼稚園の先生
私は…大丈夫ですから…
幼稚園の先生
あの子達を…
先生が力なく指さす方には、先生が倒れたことに気づかない、好奇心の塊のような園児が数人、大通りに向かって歩き出していた。
海斗
で…でも…
一瞬たじろいた海斗。
「あ!ブーブーだー!」
好奇心の塊な園児たちは目に映るもの全てに興味を示す。その興味は、1番向いてほしくなかった、すぐ近くを行き交うたくさんの車に向けられた。
海斗
あ…
一瞬の迷いのせいで出遅れた海斗は、園児たちが両手を広げ、道路に走り出すのに間に合わなかった。
キキーッ…バン!
1番聞きたくなかった音が周囲に響いた。















海斗
…うわっ!
気がつくとそこには、見慣れた天井。

…海斗の部屋だった。

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